この作品は、全く日本文学という域を抜け出している。
主人公は、なぜか雌の北極熊。
サーカスで活躍していたが、踊りでひざを痛め、管理職として旧ソ連の意味のない会議に出席する日々。
自伝を書きたいという望みから、かつて自分のファンだったオットセイの編集長を訪ね、原稿を渡し、雑誌に取り上げられ、人々に注目される。
しかし、彼女の作品は、西ドイツでもドイツ語に翻訳され評判となり、当局の監視対象となってしまう。やがて、彼女はシベリア行きになりそうになるが、支援団体のおかげで西ドイツへの亡命に成功する。
しかし、今度は支援団体の監視のもと、執筆をなかば強制され、嫌気がさした彼女は、スモークサーモンが美味なカナダへ亡命する。
一見すると、童話のようにも思えるが、共産圏から西側諸国に亡命した作家たちの苦労がしのばれる。言語も人種も違うと、熊と人、オットセイほどの違いは大なり小なりあるのかもしれない。
それにしても、この雌熊は変に人間味があって可愛い。
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