妻を亡くし補聴器を着けないと耳も聞こえない難聴のオーナーが経営する古いボウリング場の最後の営業日。
客が誰も来ぬまま閉店になるはずだったが、トイレを借りに若いカップルに無料で1ゲーム楽しんでもらうことにする。
しずかなボウリング場に、ボールが転がりピンが倒れる音がよみがえる。
骨董品のような古い機械。ストライクの時、すばらしい和音をたてるこだわりのピン。
そして、オーナーに全盛期のボウリング場の記憶がよみがえる。
10フレーム、カップルはオーナーに最後の一投を譲る。
彼は、補聴器を外し、自分のスタンス・ドットに立つ。
ストライクを取るよりも、あの音が聞きたかった彼の聞こえないはずの耳に、あのピンが一斉に倒れる音が響きわたる。
しずかな終わり方だが、読んでいて、心に染み入る。
ボウリングで、こんなに美しい小説が書けるとは。
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