その後も、法制審議会のもと、各分科会で審議され、2013年2月に中間試案がまとめられ、パブリックコメントに付された。
現状としては、改正要綱案の取りまとめに向けての審議を行う第3ステージまで進んでいるが、今回の改正対象が広範囲に及ぶことから、慎重な審議を行うということで、現時点でも、いつ民法改正法案が国会に提出されるかの時期は未定ということらしい。
(今、さんざん騒いでいる憲法問題も、これくらい丁寧にやってほしい)
本書では、東京大学法学部教授を経て、現在、法務省参与として、民法改正の作業に携わっている内田 貴さんが、民法改正 中間試案を比較的わかりやすく解説している。
民法は、大きく、5つのブロックで構成されている。
今回の改正は、債権法の改正とも言われるが、以下の改正部分をみると、総則の一部にも手を入れる一方で、債権編でも手を入れない部分もある。
第1編 総則(人、物、民法全体の基本事項)
第5章 法律行為
第7章 時効
第2編 物権(所有権や抵当権など)
第3編 債権(契約など)
第1章 総則
第2章 契約
第3章 事務管理
第4章 不当利得
第5章 不法行為
第4編 親族(婚姻、離婚、親子など)
第5編 相続(遺産分割、遺言など)時効でいうと、短期消滅時効(飲み屋のツケ1年とか、学習塾の授業料2年とか、医者の診療報酬債権3年)を、のきなみ廃止するつもりらしい。ただ、現在の一般債権10年の時効も長いので、さらに3年~5年という時効期間を設けることも検討しているらしい。
それと不法行為の20年は除斥期間(当事者の援用がなくても裁判所が職権で判断できる)という解釈を止めて時効という解釈に変えるらしい。
債権譲渡に関しては、債務者をインフォメーション・センター(債務者に債権譲渡の情報を集約)とする現在の第三者対抗要件は、債務者に過大な負担を強いているとして、金銭債権は債権譲渡登記制度に一元化する案や、債務者の承諾を第三者対抗要件から削除する案が提示されている。
法律行為でいうと、錯誤に関しては、判例で一定の場合に認めてきた「動機の錯誤」を、表現を改め、「目的物の性質、状態その他の意思表示の前提となる事項の錯誤」という考えに変えるらしい。
その他、危険負担を解除に一本化して条項を削除するとか、売買の瑕疵担保責任に、代金減額請求権を規定するだとか、消費貸借契約や寄託契約を、要物契約から諾成契約に変えるなど、使い勝手がよくなるかどうかはともかく、確かに結構変わるなという印象を受けた。
中間試案では、まだ具体的な条文案が提示されていないが、普通の人が条文を読んで意味が分かるようになると確かにいいですね。(それって当たり前?)
繰り返しになるけれど、国民の生活に影響を与えるルールを変更するときには、相当の時間をかけて徹底的に議論すべきなのだ。
何故、そういう法改正をしたのか、その趣旨は、効果は、メリット・デメリットは、代案はなかったのか、イレギュラーなケースにも対応できるのか等を徹底的に議論して、なおかつ、パブコメまで行っておけば、後日、なぜこんな改正を行ったのか、国民に対して説明しやすいのは言うまでもないだろう。
最上位の憲法を改正する際に、このような手続きを踏まないことの方が、よほどおかしい。
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