題名からして、どこか悲しげな物語なのかと思って読んだら裏切られた。
冒頭の一文からしてすごい。
「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝にしようと考えた。」
新聞のコラムニストである九十歳の主人公が、娼家のマダムに頼み込み、処女の女の子を用意してもらい、素裸で寝ている十四歳の少女のそばで、一緒に寝たり、歌を歌ったり、物語を読み聞かせたり、キスをする。性的能力はもはやない。
それどころか、彼女とのまともなコミュニケーションもない。
ただ、そばで一夜を過ごすだけ。
しかし、それだけで老人は恋の力を得て、精神的に若返っていく。
自分のコラムに臆面もなく、その子への思いをラブレターとして書いたりして、周囲の反響を呼ぶ。
この老人の恋は、娼家で起きた殺人事件をきっかけに危機に陥るが、最後まで少女を諦めない。
物語の最後、満九十一歳の誕生日を迎えた朝の主人公の意識は、とてもポジティブだ。
「これで本当の私の人生がはじまった。私は百歳を迎えたあと、いつの日かこの上ない愛に恵まれて幸せな死を迎えることになるだろう。」
まるで騙されたような気持ちになるけれど、あり得ないとも言い切ることもできない。
このへんが、マルケスのマジック・リアリズムなのだろうか。
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