2013年2月25日月曜日

第二次幻魔大戦 ハルマゲドン 第八集(平井和正ライブラリー)

角川文庫20巻「光芒の宇宙」発行(1983年2月)の後、1987年8月に書かれているから、約4年6ヵ月後に続編として発表された作品だ。

物語は、角川幻魔の話の流れを完全に継いでおり、高鳥慶輔がさらに幻魔に身を落としていく姿と、東丈失踪後の井沢郁江主導のGENKENの不和、丈の姉である三千子が木村市枝、平山親子の願いを受け、丈の正統な後継者として活動することを決意し、別のオフィスにいる郁江に会いにいくというストーリーだ。

この中で、やはり衝撃的なのは、高鳥慶輔と井沢郁江(霊体)がセックスする場面だろう。
これが原因で、幻魔大戦の物語から離れていった読者も多いと聞くが、確かにもっともな気がする。

しかし、冷静に読んでみると確かに郁江なのか?という疑念が芽生えてくる。
井沢郁江は、前世がムー大陸のソル王女であり、彼女は幻魔に相対してきた筋金入りの霊能力者である。

そして、郁江は、東丈を除き、高鳥が幻魔化しつつあることに最初に気づいた人物であり、その彼女が、東丈失踪後のわずか2ヵ月後に、幻魔を倒すため、高鳥慶輔の力を借りにいくというのは、あまりにも脈絡がない。

また、井沢郁江が接触した幻魔が彼女に変化することができ、高鳥の前に現れた姿がそのときの服装に酷似していたことからも、高鳥がセックスの時に感じた違和感が幻魔に憑依された久保陽子のときと酷似していたことからも、相手は井沢郁江に化けた幻魔だと考えるのが常識的な線だろうと思う。

しかし、作者は、井沢郁江が何ら変わっていないことを証明していないため、本物ではないかという疑念が捨てきれず、井沢郁江を好ましいキャラクターと思っていた潔癖な読者には、明らかに誤解を与えても仕方がないような内容になっている。
(後日、作者はこの誤解を解消するような小さな井沢郁江のエピソードを書き足している)

結局、この初代幻魔大戦(無印 幻魔大戦とも呼ばれているらしい)の本編は、この作品で幕を閉じ、断片的なその後が「ハルマゲドンの少女」で明らかにされている。

それによると、真幻魔大戦で語られていたような未来、すなわち、この後、三千子が炎の中で死に、丈が受けた最大最悪の試練だったということ、東丈がルナ王女と再会し、ルナ王女からの不器用なプロポーズを受けること、久保陽子とタイガーマンがさらに悪行を振るい、最終的に地球は火と氷の激烈な戦いの戦場と化し、地殻が割れ砕ける凄惨なマグマの奔流と大激変の中で破滅を迎える場面が訪れ、GENKENのメンバーが別の世界での再会を期すという、未来ではなかったということだ。

おそらく、この第八集までの視点と手法で小説を書き、「ハルマゲドンの少女」につなげるためには、少なくとも10巻分はさらに必要になるような状況だったと思う。

しかし、こうして、途中で終わってしまった無印 幻魔大戦の続きを、また読んでみたいという気持ちは正直消えていない(困ったものだ)。
明らかに閉塞して行き詰まった展開の小説なのだが。

もし、平井和正の遺稿のなかに、実はこの続編の原稿があったとしたら、などと考えてしまう自分がどこかにいる。


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