漫画版の幻魔大戦のストーリーから逸脱し、独自の展開を描き始めるのは、この4巻からである。
ニューヨークで石油富豪のバックアップを受け、来るべき幻魔大戦に備えるべく、超能力者組織の結成に取り組むルナ、ソニー、ベガと別れ、一人、東京に戻った東丈は普通の高校生活に戻るが、一連の出来事により人間として成長した彼を中心に人々が集まりはじめる。
具体的には、久保陽子、井沢郁江、平山圭子、田崎宏、木村市枝、河合康夫など、以後、東丈の活動を支援する人々だ。
東丈は、GENKEN(幻魔研究会の略称)という組織を立ち上げ、平山圭子の父親の支援を得て、高校内の組織から、渋谷 道玄坂に一般の社会人が出入りできるオフィスを持つ組織まで成長させる。
物語の中心は、ここにきて、幻魔との超能力戦争から、GENKENという、東丈の思想を伝播する目的の講演や出版物の準備を行う、一歩間違えば、新興宗教団体と思ってしまいそうな組織作りに移ったといっていい。
ニューヨークにいるルナたちの活動とはまったく無関係に物語は進むことになる。
子供のころ、何故、この4巻から物語の方向を転換させていったのか、甚だ疑問だった。
しかし、今読み返してみると作者が本当に書きたかったのは、ここからの物語だったように感じる。
ここで描かれるのは、GENKENという組織をめぐる人々の様々な思惑、組織拡大、利権の獲得、内部分裂といった、あらゆる組織に共通する課題に苦悩するリーダーとしての東丈の精神的な葛藤の様子だ。
そして、それとバランスをとるように、幻魔の活動も派手なものではなくなり、超能力を持つ丈を嫉妬していた元親友の江田四郎に憑依し、丈の活動を真似るかのように、悪霊教団を作ろうとしている実態が分かる。
作者は、本来の主題であった幻魔、超能力というSF的な存在を物語から後退させ、救世主として成長する若者、つまりキリストを描きたかったのだろうか。
その途方もない試みに、今読み返してみても、戸惑う自分を感じてしまう。
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