2014年12月13日土曜日

街場の戦争論/内田 樹

内田樹の街場シリーズを読むと気づかされることが多いが、今回も例外ではなかった。

安倍政権は「国家は株式会社のように運営されるべきだ」と考えている、というこの一言で、安倍政権と日本国民の実態が、とてもよく理解できた。

株式会社が最優先すること、それは利益である。
 →アベノミクス

利益を上げるために、経営者の視点からみて、できるだけ低賃金で高能力の人材と、使いやすい労働制度を求める。
 →グローバル人材の教育推進、残業代ゼロ法案、労働者派遣法改正

より多くの利益を求めるため、効率性を重視する。その効率性を阻害するものを排除する。

 →議論と手続を重んじる民主制、立憲主義を否定し、独裁制にする
   (意思決定が速く経営が上手いワンマン社長のイメージ)

 →特定秘密保護法案の強行採決(事実上の憲法21条(表現・思想の自由)の廃絶)、
   集団的自衛権行使を可能とする閣議決定(事実上の憲法9条の廃絶)

株式会社は有限責任

 →倒産した会社(大日本帝国)が負っている負債(戦争責任)を引き継がない
   (戦争をしたのは私たちではなく先行世代であるという自民党の政治家の発言)

    (本書でも述べられている通り、国家はまさに無限責任でなければならない)

考えを同じくするグローバル企業(輸出企業)を優遇する

 →法人税減税法案、原発再稼働

そしてそういうビジネスマン的な考えに慣れた(サラリーマンとして飼いならされた)国民の過半数が、企業の収益の最大化のためなら、自分たちの安全や健康、思想や自由を犠牲に差し出してもかまわないと考えているという説明は、実に明快だ。

それが、最近の新聞報道にあった圧倒的な自公優勢の選挙結果の予想なのだろう。

本書では、内田氏が、安倍政権の日本の今後を以下のとおり予測している。

 ・独裁的な政体
 ・平和主義外交の終わり

本書冒頭の「私たちが今いるのは、負けた戦争と、これから起こる次の戦争にはさまれた戦争間期ではないか」という内田氏の予感が、現実のものとならないことを心から願う。


週刊プレイボーイ掲載の『街場の戦争論』についてのインタビュー
http://blog.tatsuru.com/2014/12/10_1617.php
安倍さんたちが目指しているのは、北朝鮮とシンガポールを合わせたような国だと思います。
政治的には北朝鮮がモデルです。市民に政治的自由がなく、強権的な支配体制で、自前の核戦力があって国際社会に対して強面ができる国になりたいと思っている。
経済的な理想はシンガポールでしょう。国家目標が経済成長で、あらゆる社会制度が金儲けしやすいように設計されている国にしたい。

2014年12月8日月曜日

絵本についての、僕の本/片岡義男

冒頭の片岡義男の絵本に関する説明がいい。

絵本とは、ごく簡単に言うなら、現実にはどこを探しても存在していない世界のことだ。それは想像力によって頭の中に作られていく世界だ。一冊の絵本という具体物とはまったく別に、その絵本をきっかけにして、僕の想像力は刺激を受け、その刺激によって、頭のなか以外のどこにもない世界を、作っていく。 
幼い子供は、自分の頭のなかに想像力というものを作らなければいけないことを、本能的に知っているのだと僕は思う。身のまわりにあるものをとおして、幼児は必死に想像力を育てる。この本能的な必死さを、すっかり失ってしまった人たちが、いわゆる大人と呼ばれる人たちなのだろう。
本書で紹介されている本は、すべて英語圏の絵本というところが、片岡義男らしいと言えば、それまでだが、若干残念ではある。

面白いのは、片岡が絵本について、ただ単に可愛い、愛らしい、楽しい、愉快な夢のような世界を提示するだけのものではなく、社会の基本的な理念に沿って、子供たちを厳しく教育していくという教科書的な役割を重視している点だ。

ABC、文章の構成、数の数え方などを教えるのはもちろん、子供たちが個人的な主観の世界から抜け出て、社会のなかで普遍的に機能する価値観や理念を、しっかりと身につけるために、絵本の役割はあるという考え方が述べられている。

本書は、片岡が趣味でコレクション的に集めた絵本を、オシャレな感じでまとめただけの本のように見えるが、実は日本の教育の現状と、理念がない社会について、質の高い絵本を豊富に生み出し続けている英語圏社会と比較し警鐘を鳴らしている、とても硬派な本なのだと思う。



2014年12月7日日曜日

12月14日 衆議院選挙について

読売新聞12月4日の朝刊では、自公300超す勢いとの見出しが新聞の一面に出ていた。

http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2014/news2/20141203-OYT1T50109.html

他の新聞社も、ほぼ同じ予想結果を掲載している。


朝日新聞 自民300議席超える勢い
http://www.asahi.com/articles/ASGD376BZGD3UZPS01L.html


毎日新聞 自民300議席超す勢い
http://mainichi.jp/select/news/20141204k0000e010124000c.html


日本経済新聞 自民、300議席うかがう
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS03H4I_T01C14A2MM8000/


現在は、自民党、公明党の与党の議席数を合わせると、326議席。

今度の衆議院選挙後の総議席数が475なので、その3分の2にあたる317議席を自公が獲得すれば、参議院で法案を否決しても、衆議院で再議決すれば、法律を成立することができることになる。

普通、選挙序盤でこのような報道をすると、その反動で、野党に投票する傾向になると言われるが、自民党支持の姿勢を鮮明に打ち出している読売新聞が、このような記事を一面に掲載した意図を考えると、そのような揺り戻しは起こらず、自公が勝利するのは手堅いと見越しているからなのかもしれない。

振り返れば、特定秘密保護法(12月10日施行)の強行採決、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定など、国会での十分な議論のプロセスを経ずに、日本国憲法の基本理念である平和主義、国民の知る権利を脅かすような安倍政権の危険な一面が見えた2年間だった。

そもそも、今回の衆議院選挙は、消費税増税を延期することで、安倍政権が推し進める経済政策 アベノミクスの信を問うというのが建前らしいが、読売新聞の読み通り、今回、自公が300を超すような議席を獲得できる結果になれば、間違いなく、安倍政権は、「国民の信を得た」という姿勢で、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障法制の整備、さらには、憲法9条の改正、原発再稼働、沖縄の辺野古埋め立てなどを、今まで以上に強引に推し進めることになるのだろう。

そう予想する人は少なくないはずだから、安倍政権への反対、牽制のため、今回の選挙で、少なくとも自民党の議席数は減るだろうと私は思っていたのだが、全くの見込み違いだったらしい。

党首討論で安倍首相がボードに書いていた

この道しか無い



安倍首相の発言を見ると、「この道」には、単にアベノミクスだけではなく、安全保障法制も含んだ今まで安倍政権が推し進めてきた主要な政策という意味合いも込められているようだ。

「この道」の先に、果たして何があるのか、よくよく考えて投票する

そう、私に思わせてくれた世論調査の結果だった。


*哲学者 内田 樹さんの共同通信のインタビュー
http://blog.tatsuru.com/2014/12/05_0858.php

――安倍政権はグローバル企業の収益増大のことしか考えていない。そのためには「国家は株式会社のように運営されるべきだ」と信じている。――