2018年11月19日月曜日

胡蝶/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5

玉鬘は、光君がかつて愛し、それが原因で生霊の六条御息所に殺された夕顔が遺した姫で、かつて仕えていた女房の右近の引き合いで、今は光君の邸宅 六条院に住んでいる。

この姫の美しさに、様々な男たちが心動かされ、恋文を送り付けている。
光君の弟で、妻に先立たれた兵部卿宮や右大将、そして実は異母弟である中将の柏木(内大臣 頭中将の息子)も、その中にいる。

光君は、まるで実親であるかのように、それらの恋文に対する対処法を玉鬘に教える。
男からの手紙には焦らして返事をしないほうがかえって男の気持ちをそそるとか、女は慎みを忘れて心の赴くまま情緒を知ったかぶりした対応をしないほうがよいとか、身分の下の者には、心を尽くし続ける男にはその功労を認めてあげなさい等々...

これが本当の親心から言っていれば姫の心にも伝わるのかもしれないが、そこにはライバルたちを退け、姫を独り占めしておきたいという下心があったのかもしれない。

実際、光君は思い余って、姫に添い寝したり、手を握ったりするのだが、玉鬘は涙を流したり、体を震わせる。

色男の鈍感さからか、光君はなぜ玉鬘が自分を嫌うのかわからない。

しかし、客観的に見れば、自分の親(頭中将)にいつまで立っても引き合わせようとせず、親の代わりの真似事をする一方で、その実、自分を寝取ろうと欲望をたぎらせている信頼がおけない中年のオヤジという状況だと思うのだが。

自分を迎い入れなかった姫に「けっして人に気づかれないように」と言い残すのも、解釈によっては、自分を嫌っていることを周りの人々に気づかれたらこの邸で生きていけないと、暗に脅しているようにも思える。

厭らしいオヤジにめげずに潔癖な対応をする玉鬘に一票。

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