光君は、幼い頃から彼女を好きだったらしい。
「いったん恋をしたら忘れない心癖なので」と文中にもあるが、朝顔の姫君の父が死んだのを機に、お見舞いの手紙を何度となく送ったり、彼女と同居する叔母の見舞いにかこつけて会おうとしたりと、光君は相変わらずの振舞である。
しかし、この朝顔の姫君は、しっかりした女性らしく、今までの光君の女性関係を見て、容易に心を許そうとしない。
そんな彼女に腹が立った光君が、自分に会おうとしない理由は、朝顔の姫君の容色が衰えたからではないかという趣旨の歌を送る。
そんな嫌味にも挑発にも乗らず、彼女は「あるかなきかに色あせた朝顔」が自分であると認めるような歌を返す。
「あるかなきかに色あせた朝顔」とは、いかにも妙齢の女性にぴったりの表現だ。
こういう歌を返せるだけの知性と客観性がこの姫にはあったのだろう。
一方で、光君は夢で、死んだ藤壺が、自分との関係が世に漏れてつらい思いをして、苦しくてたまらないと訴える夢をみる。
息を引き取った女は、はじめて契りを交わした男に背負われて三途の川を渡るという。
彼女を弔うお経を唱えながら、光君はなぜか、自分は藤壺を背負いもできないだろうと思う。
「少女」は、光君と葵の上の息子である夕霧をめぐる話だ。
光君は、なぜか、自分の息子にいちはやく高い位を与えようとせず、六j位という低い階級を与え、大学寮で学問させる。その理由が、
世の栄華に慣れていい気になってしまうと、学問もしなくなる。時勢が移り、運勢が下降してきた際は、人に軽んじられ馬鹿にされるようになったとき、学問という基礎があってこそ、実務の才「大和魂」も世間に確実に認められる
というもの。
まるで、光君がやっている生き方とは正反対の生き方を強いるあたり、自分はテレビを見ながら「勉強しろ」という親と同じかもしれない。
I
この夕霧、幼なじみの姫君 雲居の雁(内大臣 頭中将の次女)と恋仲になるのだが、冷泉帝の妃選びで光君に後れをとったこともあり、内大臣は、二人を引き離しにかかる。
夕霧は、低い官位のため、雲居の雁の傍の女房達にも嫌味を言われ、親父の光君のような積極的な行動がとれない。
ただ、夕霧は、さすがに光君の息子らしく、そんなことにもめげず、五節の舞姫の踊りの際に見初めた惟光の娘に手紙を送る。
一方、光君は、六条京極に新邸 六条院を造営し、自分の想い女たちを一か所に集合させる。春をテーマにした東南の町に紫の上を、夏をテーマにした東北の町には花散里を、秋をテーマにした西南の町には梅壺中宮(六条御息所の娘)を、冬をテーマにした西北の町には大堰の方(明石の方)を住まわせた。
以上で、ようやく、上巻を読み終えたが、源氏物語五十四帖のうち、まだ二十一帖しか読み終えていない。
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