哲学講師の金井湛
金井の人生の中で記憶に残った性の記憶。
六歳の時に、春本を読んでいた後家と娘にからかわれた思い出
七歳の時に近所のじいさんに父母の性生活をからかわれた思い出
十歳の時に家の蔵で見つけた春本に描かれた男女の異様な姿、そして女の子の体への興味
十一歳の時に聞いた落語の中の女郎買いの話
十三歳の時の寄宿舎における男色の誘い
十四歳の時の自慰の話、友達の母親に迫られた話
十五歳の時の軟派と硬派の友達から感じる性的欲求
十七歳の時に気になった古道具屋の娘の話
十八歳の時に間借りした家にいた女中から感じた性的な印象
十九歳の時に見た美しい芸者
二十歳の時の令嬢とのお見合いの話、そして吉原での童貞喪失
二十一歳の時の待合での芸者との体験
ドイツ留学先での凄味の女との体験
そして二度の結婚
こうして書き出してみると、話の数は多い感じはするが、セックスの詳しい描写までは踏み込まず、どれも手前の部分にとどめている姿勢に徹している。
そのせいか、一丁、性的生活を書いてみよう、と目論んだ金井の最初の意気込みとは裏腹に、以後の記録は、これらの性的な出来事から、臆病なくらい必死に自分を守っている男の姿が延々と描かれているような印象を受ける。
性的なものは恐ろしいものであるかのように。
案外、今の草食系男子の時代にフィットした小説かもしれない。
100ページ程度のボリュームで、かつ、森鴎外の文章はとても読みやすい。
0 件のコメント:
コメントを投稿