実はこの作品を読む前に、原文を読もうとしたのだが、江戸期を思わせる古文は読むには読めるのだが、注を読みながらのせいもあるかもしれないが、正直頭にバシッと入ってこなかった。
そういう訳で、原文も読み切れないまま、ほぼ、まっさらな状態で、川上未映子 訳の「たけくらべ」を読んだのだが、とてもテンポよく一気に読み切ることができた。
何というか、非常に不思議な感じがした。
物語は、明らかに江戸の雰囲気が残った東京の町と子供たちが描かれているのだが、その物語のなかで饒舌に話す美登利、長吉、正太、そして冒頭で遊郭周りの町の風景を話す樋口一葉の口調は、まさに現代語なのだ。
新訳とは、こういうことなのか。
すでに古事記の池澤夏樹訳を読んでいるが、やはり、明治(江戸)の方が、そして、この物語の設定の方が、まだ身近に感じるせいだろうか、ストレートにその面白さが伝わってきた。
その最たるところは、やはり、軒先で鼻緒を切ってしまった信如に対して、美登利が、美しい友禅の紅葉模様のきれを投げ入れる場面の文章だと思う。
美登利の切ない思いが痛いほど伝わってくる。
川上未映子は、「もし一葉が現代に生きていて、現代の言葉でこの『たけくらべ』を書くとしたら…」と問い続けたということだが、その試みは成功していると思う。
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