池澤夏樹が株式会社ボイジャーと組んで、自身の作品の電子書籍化を本格的に始めたらしい。
http://dotplace.jp/archives/10786
この記者会見の記事を読むと、ボイジャーの電子書籍ビジネスは、作家の報酬の取り分が、紙の本と比較して格段に高いことが分かる。
紙の本は、通常、作家の取り分は10%
しかし、このボイジャーの電子書籍では、30~40%になるらしい。
これは、作家にとっては大きなインセンティブになるだろう。
もう一つ、目を引いたのは、Romancer(ロマンサー)という出版方法の仕組みである。
https://romancer.voyager.co.jp/
・作家は、自分が書いたWord、PDF等のデータを、Romancerのサイトにアップロードするだけで、簡単に電子書籍が作れる。
・EPUB 3という電子書籍のマスターデータを、作家自身が保持することができ、色んな電子出版会社に提供できる。
・アプリをダウンロードしなくても、Webベースで作品を閲覧することができる。
紙の本の出版を思えば、非常に簡便でオープンな方法と言えよう。
また、既存の出版社に対し、電子書籍の売上の10%を支払うというボイジャーの方針も、ある意味すごい。
日本の出版契約では、出版会社が、その本の独占出版権を持つという契約が一般的である。
つまり、契約を締結すると、以後、その出版会社の承諾を得ない限り、作家本人であっても、出版できないことになってしまう。
池澤夏樹は、記者会見で、紙の出版では、このような出版会社との契約もあり、丸谷才一の全集ですら、全12巻しかまとめることができなかったことを嘆いている。(本当は30巻ぐらいの著作のボリュームがあるらしい)
ボイジャーの戦略の上手いところは、既存の出版会社を敵に回さず、お宅にもフィーを支払うから、電子出版させてくださいよという有効な妥結案を提示しているところだ。
このようなボイジャーの戦略上手も、彼が電子書籍化に踏み切った大きな理由らしい。
日経の記事では、「従来の出版市場が縮小を続ける一方で、電子出版は5年後に3000億円超に成長するとの予測がある」とのこと。
池澤夏樹作品の電子書籍化は、その流れを象徴するような出来事だと感じた。
*最初、池澤夏樹の電子出版した短編小説の感想を書こうと思っていたが、この電子書籍ビジネスの話の方が、思ったよりインパクトが大きいことに気づいた。
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