かつて、立花隆の著作集を読んでいたとき、立花氏の膨大な知識の源泉またはバックボーンは何なのかを知りたくて、図にまとめたことがある。
細かい部分は忘れてしまったが、一番、ベースにあるものは哲学だったということは今でも覚えている。意外だったからだろう。
哲学が、科学や政治・社会といったプラクティカルな分野に縁遠いような気がするのは、私だけではないと思う。
しかし、立花氏も言っていたと記憶しているが、哲学とは、ほとんどあらゆる事物を対象に思考を繰り広げることができる学問なのだ。分科してしまった現代の専門的学問分野を総合的に捉え、思考することができる唯一の学問と言ってもいいかもしれない。
そんな哲学の面白さを理解する入門書として、この本は理想的かもしれない。
キェルケゴール、サルトル、ヴィドゲンシュタイン、オルテガ、マルクス、ヘーゲル、ニーチェ、デカルト、カント、スピノザ、プラトン、アリストテレス…これら23人の有名な哲学者の代表的な哲学書から、「グッとくる一言」を引用し、臨床哲学者の鷲田清一氏に対してフリーライターの永江朗氏が質問(雑談?)を繰り広げていている。
その問答では、永江氏はやたら男女関係に例えて、その思想の本質を知ろうとするし(でも分かりやすい)、鷲田清一氏もその質問から逃げずに関西弁でやわらかく返している。
そのせいか、とかく固いイメージがある哲学思想を身近な感じで理解できるという稀有な一冊に仕上がっている。
個人的にとても参考になったところを挙げると、以下の章だろうか。
・キェルケゴールの「死に至る病」における「関係」の考え方
・ヘーゲルの「法の哲学」における所有の観念
・ニーチェの「善悪の彼岸」における主人道徳と奴隷道徳、そこから話が発展したホスピタリティの考え方
・レヴィナスの「全体性と無限」における「他者」の考え方
・バルトの「テクストの快楽」における衣服とエロティックの考え方
・アリストテレスの「形而上学」における偶然と必然の考え方
こんな哲学の授業だったら、勉強してみたいと思う人は多いでしょうね。
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