2014年1月26日日曜日

リーダーシップ/ルドルフ・ジュリアーニ

本書は、ニューヨーク市長を1994年から2期8年間にわたって務めたジュリアーニが語るリーダーシップ論だ。

この本によると、彼が市長にあった8年間で、ニューヨークの殺人事件は67%減少し、全体の犯罪事件も57%、発砲事件も75%減少した。
(巻末に、福祉制度改革では、公的扶助の対象者を60%削減し、公立教育費の予算を1.5倍に増やし、常勤教師の給与を引き上げたことや、児童福祉政策、財政政策、市政の成果が挙げられている)

本書では、最初に、任期最後の年に発生した9.11同時多発テロ事件への対応について述べられているが、ジュリアーニが、市長として自分がやるべきことを3つにまとめていたこと、また、テロリストの立場になってさらに起こり得る最悪のシナリオを想定し、市を防御する戦略を立てていたことが興味深かった。

重要なことから始める、準備は怠りなく、説明責任、人材、決断のタイミング、約束するときの注意、自分の信念の伝え方、自分を貫くこと、目的に沿って組織を作ることなど。

組織に身を置いた人や何らかのリーダを務めた人であれば、思い当たるところが多い要素が並んでいるが、自分はいくつ実践しているだろうと数えると心もとなくなる思いにかられる。

中でも印象深かったのは次の2つ。

1つは、説明責任に関して、彼はこう述べている。
「わたしの下で働く人間は、わたしたちが奉仕する相手に対して行動とその結果を説明できなくてはならないという考えを基本方針としてきた。そして、わたしがまずそれを実践しなければならない。」

その具体例として、彼はニューヨーク市の犯罪率の減少に取り組むときに、コンピュータシステムを用い、毎日欠かさず犯罪統計を収集・分析し、パターンや潜在的な問題を察知することを目指した。

そのため、COMPSTAT(コンピュータと統計学の合成語)会議を設置し、幹部から現場の警官に加え、様々な分野の専門家を一堂に会して、地域ごとにその統計を検討していくという方法を取った。つまり、その場で、なぜ、この地域だけ犯罪率が増加しているのかなどの質問に対し、幹部が説明責任を求められるということになる。

さらに部署ごとに二十から四十の実績指標を定めさせ、それを実現すべき計画を立案させ、市のホームページに代表的実績指標を掲示させた。

何事も数値化すると、外部から見ても客観性と説得力があり、内部では管理しやすいというよい実例だろう。

もう1つは、彼が常に自分自身による経験・行動・考えを何より大事にしていたということだ。

もともと、ジュリアーニは連邦地検に務めていたから法律分野については専門家だったが、強姦事件を担当したときには、DNAの知識を、石炭会社の破産管財人を務めたときには、エネルギー産業の経営方法を、9.11同時多発テロ事件のときには、テロリズムとは何かを、素人ながら本を読んで独学し、専門家に任せきりにせず、自分の頭で考えたということだ。
また、事件があったら必ず現場を訪れ自分の目で確認するというやり方もオーソドックスだが、こういう信念がないと、ついつい人任せになってしまうだろう。

今度の都知事選も、口先だけの政策でなく、候補者たちの今までの実績で、リーダーとしての素質を持っているかどうかを検討してみるのもよいかもしれない。(誰もいなかったりして…)

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