2013年3月26日火曜日

真幻魔大戦14~15/平井和正

真幻魔大戦14「ムウの人狼」は、超古代世界のムー大陸の時代に、3万年後のギリシアの世界から、アポロ(東丈の前世)神託により送り込まれたクロノス(杉村優里の前世)が、マリ・ソル神殿に仕えるソル王女(井沢郁江の前世)らと、禁域である超空間に入り込み、死んだと思われたソニー・リンクスや、東丈の乗ったジェット・ライナーでともに行方不明になっていたジョージ・ドナー、出産間近のミチコ(東丈の姉)とその赤ちゃん(東丈)と出会う物語だ。

率直にいって面白い。前巻でこの世界に送り込まれた犬神小石が人狼ナルになったのかとか、好戦的な武人ダヅラは、田崎に似ているが好色な部分があるとか、巫女のフォーリアが、平山圭子の前世であるとか、ソニーが心に負ってしまった幻魔の暗い記憶とは何なのかとか、「無印」の登場人物との関係を思いながら読むのも楽しいし、何より、井沢郁江を思わせる応えない性格のソル王女と、気性が激しいクロノスとのやりとりが面白い。

15巻の「不死身の戦士」は、個性もてんでバラバラなこれらの登場人物が、ソニーのテレポーテーションで、誤って幻魔世界に足を踏み入れてしまうという物語で、これも面白い。

幻魔のイメージをストレートに表現した凶暴な恐竜のようなトカゲ人と人狼ナル、ダヅラとの死闘、ドナーと恋愛関係になってしまうピーター・ラビットのようなウサギ人少女ラチル、戦前の日本帝国陸軍そっくりの雰囲気を持つ犬人間の軍隊。

これだけ奇怪な登場人物と物語の環境を作り上げた作者の想像力は素晴らしい。
現代の世界では地味な戦いになってしまった「幻魔大戦」が、ここにきてようやく派手な花を咲かせているという感じだ。


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