2013年3月17日日曜日

真幻魔大戦9~10/平井和正

真幻魔大戦9「秘密預言書」、10「鬼界漂流」。

ニューヨークからロスへと向かうジェットライナーから消えた東丈とその関係者。
それを日本でサイキックな感覚で察知し、丈の行方を捜す秘書の杉村優里。
ここからは、彼女が主役となって物語が進んでいく。

失意に沈む優里を襲う諜報機関らしき男たち、夢魔の攻撃、そして、彼女を庇護しようとする人狼の”月影”と出会う中、優里は、自らの精神の中に、時を継ぐ者”お時”と”ムーンライト”の意識に目覚める。

そして、この9巻では、東丈の前世、由井小雪だった頃の「新」幻魔大戦とのつながり、10巻では「無印」幻魔大戦とのつながりが明らかになる。

CRAという秘密教団が優里に接触し、彼女はそこで、「無印」の活動舞台であったGENKENに属していた人々、菊谷明子、井沢郁恵、木村市枝、平山圭子と父親の圭吾、田崎、河合康夫らと出会い、「無印」での記憶、杉村由紀(優里の母親)の記憶を取り戻す。

CRAは、大角重という「無印」では登場しなかった人物が興した預言教団で、「無印」の世界の記憶を取り戻したGENKENのメンバーたちの受け皿となり、その盟主である東丈の帰還を待っていたのだ。

個人的に興味深いのは、このCRAに顔を出さない人たちである。
その代表が高鳥慶輔であるが、文中、CRAのメンバーとの会話でこんな気になる言葉が出てくる

「初めての講演会の後、彼が来て…ほら、あのカッコいい彼だよ。名前、なんていったっけ、そう、そうだった。あれが結局、超能力者全員集合のきっかけだったな。あの後いっせいにいろんなことが起きたんだ…」

初めての講演会といえば、クリスマスの日に東丈が行った講演会で、その後に来た目立つ人物といえば、高鳥慶輔ぐらいである。
あの後に起こったという「いろんなこと」も気になるが、「名前、なんていったっけ」という存在感のなさにも驚く。

また、久保陽子や江田四郎については、「無印」の世界での敵として明確に認識されているのに、彼については一言も触れられていない。

この旧GENKENのメンバーに出会ったことで、杉村優里は、時を継ぐ者として、失踪した東丈を探す役割を認識するのだが、彼女の探索は、現代ではなく、過去に対して行われるものだった。

この後、杉村優里は、木村市枝とともに、風間蘭の住まいを訪ねた際、異次元の入口に足を踏み入れてしまい、飛鳥時代にタイムスリップしてしまう。

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