水俣と福島、石牟礼道子と藤原新也という組み合わせは、やはり読まずにはいられない本でした。
「なみだふるはな」は、日本という国が高度成長期に入り工業化していく中で、印度に離脱し、日本に戻ってからも一貫して否定的な立場をとってきた藤原新也と、公害によって自分の故郷と人々を壊され、国や企業と戦わざるを得なかった石牟礼道子が、水俣病と福島の原発問題を中心に語り合った対談集です。
水俣と福島に共通点が複数あるというところは確かに感じた。
・共に風光明媚な場所で、工業化されていない土地だったこと。
・水俣はチッソ、福島は東電という会社が引き起こした事件事故であるが、両企業ともに、被害者に対して誠意がある対応や救済を行っていないこと。
・国がバックにいて、多額のお金が動いていること。地元の地域経済の活性に大きな影響力を与えてきたこと。
・水銀も放射能も匂いや味がないため、知らないうちに摂取・被爆してしまうおそれがあること。
この本のあとがきにも書かれているが、二人とも何かしらの明確な回答を求めて、話しているという感じではない。
猫や食べ物、魚や鳥や海、水俣の人々の思い出話など、ほとんどが、今のニュースでは取り上げもしないだろう普段の話だった。
しかし、そういった普段の生活にあった物事が壊され続けてきたということを、二人の話を読んでいて、しみじみ感じた。
小さな言葉や小さな生命をみつめる。
大きく祈ったりせず、小さな祈りを。
そんな言葉に改めて救われたような気がした。
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