2012年3月10日土曜日

落ち込んでいるときは…


落ち込んでいるときは、何をしても上手くいかないような気がする。
そういう時は、つまらないことにでも願をかけたくなるものだ。

駅まで歩く道、渡らなければならない信号機が2つあるのだが、タイミングが悪いと、横断歩道の手前ぎりぎりのところで、青信号は点滅し、渡るのをあきらめる。渡り切る道路の距離が長いのだ。
そして、3分近く待つことになる。

今日は…と思っていると、すでにはるか前方で信号は青に変わった。このままのスピードで歩いていると、間違いなく赤になってしまう。

青で渡ったら…と、願をかけ、走る。
リュックが揺れ、マフラーが首から外れかけ、冷たい空気が喉もとに入ってくる。

横断歩道の真ん中で青信号は点滅し、渡り切ったところで赤に変わった。

荒くなった息が頭にこだまする中、ふと、タルコフスキーの映画「ノスタルジア」の最後のシーンが頭を過ぎった。

心臓の病を患っているロシア人作家アンドレイが訪ねたイタリア トスカーナ地方の村で、村人から狂人と噂される老人ドメニコと出会う。

ドメニコは、アンドレイに、自分が果たせなかった願いを託す。
それは、村の広場の温泉を、ロウソクの火を消すことなく渡り切ることができたら、世界はまだ救われるというものだった。

アンドレイは、ドメニコとの約束を果たそうと、ロウソクの火を手のひらで風から守りながら、温泉を渡りきろうと試みる。



世界は救われたのだろうか。
まだだとしたら、後、何回、温泉を、横断歩道を、渡りきればよいのか…

そんな、つまらないことを一瞬だけ、考えました。

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