民法といっても、ぴんと来ない方もいらっしゃるかと思うが、私たちの日常の活動にかかわる法律の中で最も基本的な法律と言われている。
民法は、大きく、5つのブロックで構成されている。
1.総則(人、物、民法全体の基本事項)今回、大きく変えようとしているところは、3.の部分らしい。
2.物権(所有権や抵当権など)
3.債権(契約)
4.親族(婚姻、離婚、親子など)
5.相続(遺産分割、遺言など)
契約 とは、大雑把に言えば、スーパーで物を買うときの売買、マンションを借りるときの賃貸借のルールのことである。
よく知らなかったが、3.の契約のルールについては明治29年の民法制定以来、ほとんど変更がなかったらしい。
2004年に、民法が現代語化されたとき(それまではカタカナ交じりの文語体だった。今思うとちょっと信じられない)に、大きく変わったような気がしたが、ほとんど中身の変更はなかったらしい。
著者の内田貴さんは、東大法学部の教授で、民法に関する非常に分かりやすい教科書を書いている人であるが、この民法改正の作業に携わるために、わざわざ、教授の職を辞め、法務省の参与になった方だ。
とりわけ、
著者においては、以下に述べる民法改正の必要性についての思いが強かったらしく、そのあたりの思いが本書でも静かではあるが熱く述べられている。
A.文章のわかりづらさを是正する
厳密さを追求するあまり、プロしか読んで分からない文章になっている。これをユーザフレンドリーで明快なテキストにする。
B.確立した判例ルールを条文化する
裁判で確定したルールについては、実質法律なので、これを分かりやすさの観点から明文化する。
C.日本民法の国際競争力を高める
世界的な市場の拡大(EU、FTA、TPPなど)に伴い、契約法が国際的に共通化する流れの中で、日本がガラパゴスにならないように、国際標準として通用する内容に見直す。また、英訳しても明晰さを失わない文章に書き直す。
とりわけ上記C.の部分は、日本がウィーン売買条約に、発効から20年遅れで批准したことで、受けたデメリット、例えば、売買条約の解釈や、国際取引ルールの形成で、他の国々に、日本の法文化や実績を対外的に主張できるプレゼンスが低いことを例に挙げている。
古い法曹の中には、改正など必要ないという声が聞かれているそうだが、やはり傍目から見ると、飯の種が変わってしまう(条文ががらりと変わると一から法律を学びなおさなければならない)ことへの反発としか思えない。
現在の進捗状況では、2013年2月ごろに、中間試案がでるそうだ。
しかし、すでに企業や経済界の実務レベルでは、改正論点のテーマについて、かなり議論になっている。
ちくま新書の、薄っぺらな本でしたが、民法改正の基本理念の大所がつかめる非常に有意義な本でした。
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