西暦1300年4月4日、「人の世の歩みのちょうど半ばにあったとき」、ダンテは暗い森の中をさまよい、詩人ウェルギリウスに出会い、彼に導かれながら、地獄降りをはじめる。
ダンテの描く地獄はとても観念的で、原罪、愛欲、食悦、貪欲・浪費、高慢・嫉妬・憤怒・鬱怒、異端、暴力、自己破壊、男色等々、罪の重さによって地獄圏が異なり、罪人の罰せられ方も違う。
そして、これらの地獄には、旧約聖書、聖書、ギリシア神話の人物、エピソードが登場し、この「神曲」一冊を読むだけで、実質的にこれら3つの物語を読んだことになる。
今回は、須賀敦子の訳詩の美しさにとどまらず、藤谷道夫が付けた濃密な注釈と解説に魅入られてしまった。
詩の一行一行に、日本人の感覚とは相容れない西洋的倫理観が隠されていて、その意味を明らかにしていく過程が読んでいて実にスリリングだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿