2020年5月16日土曜日

ボーダーライン(Sicario)/ドゥニ・ヴィルヌーヴ

ヴィルヌーヴ監督を知ったのは「ブレードランナー 2049」を見たからで、「ブレードランナー」が大好きだった私は、この続編に全く期待していなかったのだが、その予想を見事に裏切られた。

映像の静かな美しさ、レプリカントの辿る運命の哀しさが見事に表現されていて、何度も繰り返し見ている。
特にウォレスの秘書的な役割を果たすレプリカント ラヴ(Luv)を演じる シルヴィア・フークスの演技は見事だ。
ほかの作品の彼女を見たが、この作品のラヴのような面影を全く感じないところは、演技力の高さを示していると思う。

印象的なシーンは、オフ・ワールドに、ハリソン・フォード演じるデッカードを移送する際、彼からどこに連れていくのか質問を受けた際、彼女が「Home(故郷)」と答えるシーンだ。
ラヴも、過酷なオフ・ワールドの世界で働いていたと思わせるような一言だ。

前置きが長くなってしまったが、そんなヴィルヌーヴ監督の別の作品も見てみたいと思い、『ボーダーライン』(原題 Sicario:スペイン語で「殺し屋」)を見た。

麻薬カルテルが起こした誘拐事件をきっかけに、女性FBI捜査官のケイトが、国防総省のマットが率いるCIAの特別チームに引き抜かれ、カルテルのボスを追跡する物語で、最初は、女性FBI捜査官の活躍を描く作品なのかと思ったが、全くのヒヨコ扱い、果ては彼女のミスをきっかけに汚職警官の捜査のおとりに使われるという容赦のない物語が展開していく。
(特にカルテルの幹部を移送する際で起きた高速道路のシーンはリアルな緊張感がある)

とりわけ、この物語の非情さを体現しているのが、ベニチオ・デル・トロ演じる謎の捜査官アレハンドロだ。

アレハンドロがケイトに最後に言うセリフが一見優しいようで厳しい。
You will not survive here.
You're not a wolf, and this is the land of wolves now.

こういうハードボイルドな映画も作れてしまうヴィルヌーヴは、すごい監督なのかもしれない。


もう一つ、メッセージ(原題:Arrival)という映画も見た。
こちらは、謎の目的で地球に来たタコのような宇宙人とコンタクトする言語学者の女性の物語で、これもテーマ性のあるしっかりとした映画でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿