ノルウェーの画家 エドヴァルド・ムンクは、80年の生涯で二万点もの作品を残したという。
軍医で厳格な父は精神障害を患い、母は結核を患う。その両親の間に生まれ、病の遺伝と死の恐怖は身近にあった。実際、母と姉を結核で失い、父と弟は肺炎で亡くなる。
ムンクというと、「叫び」を思い浮かべるが、この作品も一つだけではないらしい。
ムンクは気に入ったモチーフは何度も繰り返し描いたという。
そして、多くの自画像も描き残している。
藤原新也の「自画像とは自分が混乱しているときに、自分を見つめ直すために描くものだ」というコメントが面白い。
以下、絵画ごとに面白かった藤原新也のコメント。
・リトグラフの自画像
藤原新也:モノトーンの絵を立体的にするため、そして中央の自分の顔の白さ(白いペストと言われる結核の死の恐怖の意味)を際立てさせるため、下の骨に薄くグレーをかけている。
・「地獄の自画像」(恋愛の縺れで恋人に左指を拳銃で撃たれた際に描いた絵)
藤原新也:後ろの黒い部分に狼が描かれていて、ムンクを見つめているという指摘(よくみると、そんな気もする)。「この人は地獄に落ちた自分を描きたいのよ。芸術家の性だね」のコメントも面白い。
・「自画像、時計とベッドの間」(最晩年の自画像)
藤原新也:時計というのは常に未来に向かっているが、この時計には針がないということは明日がないということだ。表情のない顔は、刑務所に入れられるときに撮影されるマグショットのようだ。ベッドカバーは死の床で、歩いていくと扉の向こうには闇(死)がある。このような複数の謎解きがムンクの絵には含んでいる。・「叫び」(47歳ごろに描かれたもの)
この「叫び」に似た背景の絵で、「フリードリヒ・ニーチェ」という絵があるのも面白い。
藤原新也:ニーチェの「神は死んだ」という思想が、産業革命と自然との懸け橋、絶望の一歩手前という状況にふさわしいからだというコメントも興味深い
複数の人妻との不倫遍歴で描かれた「接吻」「マドンナ」「マラーの死」も興味深い。
・マドンナ
藤原新也:左下の胎児が女性をにらんでいるという指摘には驚いた。(枠に描かれているのが精子だとすると...怖い)トラウマを埋めるために様々なイメージを重ねたというムンクの人生を振り返りながら、
藤原新也の「僕はこういう人とはつきあいたくない」という最後のコメントに笑ってしまった。
東京都美術館で開催されているらしい。
https://munch2018.jp/
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