作者の1960年代の作品が中心に集められているので、私にとっては、ほとんど未読の作品だった。
しかし、これらの作品にも、ジュブナイル小説同様、やはり、眉村卓としかいいようのない雰囲気が漂っている。
理不尽な環境で懸命に生きる生真面目な主人公。彼は従順に耐え忍ぶが、ある臨界点をもって、その押し込められた感情は爆発する。
ある意味、倫理的と言ってもいいかもしれない。
この準B級市民も、そんな雰囲気の小説だ。
生産人口の調整のために人工的に作られた人間。見た目はまったく普通の人間と変わらないが識別票で厳格にB級(人造ロボット)であることが管理されている。
主人公であるイソミは、B級であることを理由に、A級である人間から差別され、就いた職からも追いやられる。
なぜ、B級であるロボットが人間より、いい仕事に就いているのかと。
やがて、彼は少年の頃に好きだった女の子マツヤと出会い、幸せな生活を送るようになるが、人間たちのロボット排撃運動に襲われることになる。
今、世界各地で起きている移民/難民をめぐる排他的な状勢とほとんど同じ世界が描かれていると言ってもいいかもしれない。
SFが近未来を描く小説ということならば、この1965年の作品はまさにSFだ。
準B級市民という冗談みたいな存在が現実になる社会。
少年の頃好きで久々に読んだ眉村卓の小説に、そんな鋭い視点があったことがうれしい。
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