幻魔大戦Deep 8は、本編の終了後に、appendixが14章もついているが、基本的には、本編の物語の流れを引き継ぐ内容になっている。
冒頭の“握り潰し”が、面白い。
下痢になった美恵が、少女を犯すレイプ犯たちの睾丸を握力70kgの力で握りつぶしてゆくという活劇が展開されている。久々に、作者の下品なアクションシーンを読んだような気がしたが、やはり、こういう場面になると、俄然、文章が活き活きしているのが感じられる。
もう一つ面白いのは、東丈を愛人として求める欧州の王女の存在だ。
彼女は、欧州王族結社のような団体のメンバーで、イスラムの無力化を目指し、イスラム原理主義のテロリスト、過激派を養成し、彼らに事件を起こさせ、イスラムを世界全体の敵に仕立て上げ、イスラム全体の衰退を狙っている。
この作品が2001年のニューヨーク同時多発テロの後に書かれた小説ということもあるが、その後のテロ事件の継続を考えると、この作品の目の付け所は鋭い。
強力な催眠能力を有する彼女に死んだ姉妹がいるというあたり、彼女がルナ姫の妹で、リア姫の姉のような気がするのは、私だけではないだろう。
このappendixの最後のほうでは、東美叡を夜な夜な苦しめていた“斉天大聖”が、サンシャインボーイと共に現れ、東丈のパソコンから、1995年12月8日に作成された“GENKENに関する考察”というファイルを見つけ出す。
そのファイルには、1960年代、渋谷に“GENKEN”という宗教団体があり、そのカリスマとして東丈が存在していた事実が書かれていたが、東丈には、そのような文書を作成した記憶はない。
そして、“斉天大聖”に鍛えられるべく、ついに東丈は幻魔と相対することになる。
読み終わった感想としては、東丈という存在意義が少しだけ分かったような気がした。
何故、彼が二度も失踪しなければならなかったのか、それはつまり彼が自分の存在意義をうすうす覚知したからということなのだろう。
この作品の最大の収穫は、続編が書けるような余裕がある世界観、物語構成にtransformできたことだと私は思う。
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