2016年10月16日日曜日

ミシェル・オバマのスピーチ

アメリカ大統領選挙をめぐる報道が、最近あまりにも下品な内容になってきていることに眉をひそめている人も多いと思うが、一連の問題を引き起こしているトランプ氏の言動を真っ向から否定したミシェル・オバマのニューハンプシャーにおけるスピーチの見事さに感じ入ってしまった。



オバマ夫人は、今週はとても対照的な出来事があったと話す。

その出来事の一つは、 彼女が、10月11日の国際ガールズ・デーに、世界各国の女子をホワイトハウスに招いて、"Let Girls Learn"(女子に教育の機会を)の運動を祝ったということ。

オバマ夫人は、言う。

彼女たち自身がどれだけかけがえのない存在であるかを再認識させることが重要であり、彼女たちに、あらゆる社会を計る尺度は、女性をどう扱うかによるのだということを理解させたかったと。それから、彼女たちと話して、とても元気をもらったということを。

そして、もう一つの出来事、大統領選挙における候補者(名前は出していない)の女性に対する一連の侮蔑的な言動に触れる。

オバマ夫人は、言う。

And I can't believe that I'm saying that a candidate for president of the United States has bragged about sexually assaulting women.

自分がこれから言うことが信じられませんが、アメリカ大統領の候補者が女性への性的暴行を自慢したのです。

It has shaken me to my core in a way that I couldn't have predicted.

それは予想できないほど、私の心の底を揺さぶりました。

This is not something that we can ignore...Because this was not just a "lewd conversation". This wasn't just locker-room banter. This was a powerful individual speaking freely and openly about sexually predatory behavior, and actually bragging about kissing and groping women, using language so obscene that many of us were worried about our children hearing it when we turn on the TV.

これは無視できることではありません。...何故なら、これは単なる"卑わいな会話"でも、ロッカールームでの軽口でもないからです。これは、権力者が、自由にかつ公然と、性的暴力の振るまいについて、女性にキスして体を触ることを、実際に自慢していたのです。テレビをつけたときに、子供たちが聞くのが心配になるような猥褻な言葉を使って。

The shameful comments about our bodies. The disrespect of our ambitions and intellect. The belief that you can do anything you want to a woman.

私たちの体についての恥ずべき発言。私たちの意欲や知性に対する軽蔑。女性には、したいことは何でもできるという信念。

We thought all of that was ancient history, didn't we? And so many have worked for so many years to end this kind of violence and abuse and disrespect, but here we are, in 2016, and we're hearing these exact same things every day on the campaign trail.

そんなことはすべて過去のことだと思っていましたよね。 多くの人々が何年もかけて、こんな暴力や虐待、侮辱を終わらせようと働いてきました。なのに、この2016年に、私たちは選挙戦で毎日まったく同じことを聞かされています。

Too many are treating this as just another day's headline, as if our outrage is overblown or unwarranted, as if this is normal, just politics as usual.

その日のヘッドライン程度にしか取り扱わない人が多すぎます。まるで、私たちの怒りが大げさで、正当な根拠がないように、まるで、これは正常なことであり、ごく普通の政治であるかのように。

But, New Hampshire, be clear. This is not normal. This is not politics as usual. This is disgraceful. It is intolerable.

しかし、ニューハンプシャーのみなさん、はっきりさせましょう。これは正常なことではありません。普通の政治でもありません。これは、恥ずべきことであり、容認できないことです。


以下に、この日のスピーチの全文が載っている。
http://www.npr.org/2016/10/13/497846667/transcript-michelle-obamas-speech-on-donald-trumps-alleged-treatment-of-women

このスピーチを聞いて思ったのは、間違っていると思ったことは間違いと言わなければならないという、とてもシンプルなことだ。

しかし、当たり前のことを公に主張するということは、強い自制心と意思を必要とするものなのかもしれない。

相手の品の無さに感情的にならないよう、抑制しながら、聞く者には、常套句にならないことばの新鮮味と自分の強い思いを伝えなければならない。

このスピーチにおけるミシェル・オバマには、全世界の女性を代表していたかのような品格と迫力があった。

選挙戦は過去最悪のクオリティを呈しているが、彼女のような大統領夫人を持つアメリカを、私は、やはり全否定できないでいる。

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