本書の主役は、3人。
吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードこと、忍野忍と、阿良々木暦の妹の一人 阿良々木火憐、そして、暦の友人である羽川翼である。
「うつくし姫」は、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードが吸血鬼になる前の美しいアセロラ姫の呪われた境遇を童話にした短文。
「あせろらボナペティ」は、そのアセロラ姫を食べることに情熱を感じているデストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスターという吸血鬼が、彼女を食べようとトライするが何度も失敗し、終いに、自分の境遇がいやになったアセロラ姫の希望で、彼女を吸血鬼にするという話。
最後の一文だけ、意外性があり、面白かった。
「かれんオウガ」は、武道の達人である阿良々木火憐が、ついに師匠に免許皆伝を言い渡され、最後の試練として、山籠もりすることになる。
体力は抜群の火憐だが、今一つ常識と知恵を持ち合わせていない火憐を心配し、兄の暦が、忍野忍に助っ人を頼むという物語。
案の定、3つの山越えで、 ピンチに陥る火憐を年齢を変えた忍が登場し助ける訳だが、これも、最後のほうで、意外な事実が明かされる。
「つばさスリーピング」は、終物語で、羽川翼が、阿良々木暦を救うため、忍野メメを探しに世界中を旅していた時期にドイツで体験した怪異譚である。
傷物語でも登場したドラマツルギーが忍野メメの行方を知っているかもしれないので、その情報を聞き出すため、彼の仕事である双子の吸血鬼退治に協力するという話だ。
物語中、羽川翼が、悲観主義のドラマツルギーに対して、いい事をいう。
「常に最悪のケースを想定して動いたら、確かに最悪のケースは避けられるかもしれないけれど、だけど最高の想定には、辿り着けないじゃないですか。チャンスをつかみたいなら、あらかじめチャンスを想定しないと」
幸せな自分をイメージできない人間は、幸せになれない―つくづく思うけれど、そういうことである。
そのポジティブ思考をきっかけに、羽川翼が窮地を脱するという話。しかし、この怪異譚以外にも、忍野メメを探し当てるまでに色々と事件があったらしいことが文末に感じられる。
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