「ドライブ・マイ・カー」は立ち読みで、「イエスタディ」は文藝春秋を買って読んでみた。
「ドライブ・マイ・カー」は、女優の妻を病気で失った初老の俳優が、自分の愛車を運転することになった一風変わった若い女性運転手に心を開き、妻が生前浮気していたこと、そして、なぜ妻は、その男に惹かれたのかを知るために、その男と友達になり、執拗にその理由を探ったことを告白する物語。
読んだ当初は、そうでもなかったのだが、未だに物語のアウトラインや登場人物が、ざらりと記憶に残っている。
妻に対する執着というか、自分の愛したもの(愛車のサーブもそう)に対する強い執着と、それを他人に扱わせたとき(ドライブ・マイ・カーはまさに比喩)の男の奇妙な厳しさが印象に残った作品。
「イエスタディ」は、完璧な関西弁をしゃべる、生まれも育ちも東京都田園調布の浪人生と、ほぼ完璧な標準語をしゃべる神戸の芦屋で育った大学生の僕が友達になり、複雑な理由で僕と浪人生の彼女がデートをすることで三人の関係が変わってしまったという物語。
真実は見えているのに、人はふとしたことで終わりない回り道をしてしまうという、ちょっと悲しい物語だ。
浪人生が付けた「イエスタディ」の関西弁の詩が何となく哀愁を誘う。
昨日は
あしたのおとといで
おとといのあしたや
それはまあ
しゃあないよなあ
村上春樹の短編は、やはり上手い。
次回作も期待したい。
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