2011年11月13日日曜日

カフカの「審判」

一読して、どことなく村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の、世界の終わりの雰囲気に似ているなと思った。

不条理な法に支配された世界なのだが、細部に関しては奇妙に理路整然としており、主人公がその細部にとらわれ、少しつず現実的な考え方を失っていくところなんかは、よく似ていると思う。

無礼な監視人、主人公Kの職業すら把握していない予審判事、浮気っぽい廷丁の妻、目的を見失い弁護士に支配されているような被告人、ガラクタ置き場にいる苔刑吏、屋根裏にある裁判所事務局、裏口からの無罪の勝ち取り方をすすめる裁判所の画家、請願書を一向に書かない弁護士、裁判所とつながりがある僧、執行人と思しき男たちが、次々と主人公Kの前に現れる。

誰ひとりとしてその存在する意義は不明であり、彼らの真の目的もわからない。

結局、主人公Kは、高級裁判所にも行きつくことができず、裁判官にも会えないまま、なぜ自分が突然、訴訟に巻き込まれたのかも分からぬまま死んでいく。
(「世界の終わり…」では、主人公は最後は諦めて自分の死を迎えるが、不条理な死という点でも似ている)

カフカは、プラハ大学で法律を学んだというが、物語の後半で、裁判所とつながりがある僧が主人公Kに対して言った言葉は奇妙に説得力があるように感じた。

「…裁判所はあなたになにも求めはしないのだ。あなたが来れば迎え、行くならば去らせるだけだ」

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