ボルドーの義兄でも見られた、ちょっと変わった女友達との親密な関係。
小説や戯曲を書き、あまり家から出たがらないわたしと、対照的に行動的な髪の毛を緑色と金色に染めたパンク風の舞台監督のハンナ。
お互い正反対な存在というのは、全く拒絶しあうか、惹かれあうものなのかもしれない。
青いジーンズが似合うハンナの姿に刺激を受けて、ジーンズをはいたまま、小説を書いてしまい、腰を痛めてしまったわたしが可愛い。
小説を書く時には、ゆるくて暖かいモンペをはいていなければいけない。いつもお茶を飲みながら、モンペをはいて、スリッパを履いて、いつもじっとすわって書いている。いつも書いている。夏の光が受話器に貼った銀色の龍のシールに反射してまぶしい日でも。いつも。いつも。
そんなわたしをハンナはボートに乗せて漕いでくれるという。同性に甘やかされ、世話してもらうというのは、意外に快楽的なことなのかもしれない。
そんな優しいハンナが舞台監督を務めることになったのに、作者は見に行く暇がないという。というか、そこには無意識の対抗心が働いていたのかもしれない。
人に会いたい。机を離れたい、と思えば思うほど身体が動かなくなる、あの妙な精神状態に陥ってしまっていた。背骨を古い傘の骨のように鳴らして、原稿を書き続けた。
物語は、最後に意外な形で幕が下りるが、ティーバッグのお茶を大量に作り、そのお茶の色で舞台に使う紙を染め続け、ハーブ茶の匂いに誘われ、湿ったお茶の中で深い眠りに落ちてしまったハンナに不思議な羨望を覚えた。アルコールでは決して辿り着かない深い眠り。
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