2018年8月6日月曜日

極北/マーセル・セロー 村上春樹 訳

ストーリーもよく分からず、読み進めてしまったが、読後感が湿った雪のように、ずっしりと残った。

シンプルに言えば、メイクピースという名の主人公が、放射能で汚染され、文明の力をなくした世界で、たくましく生きる姿を描いた作品だ。

物語は、2009年に書かれており、チェルノブイリをイメージしているのが感じられる。
時代も近未来に設定しているので、ゾーンと呼ばれる立入禁止区域にある都市ポリン66は、今の時代にはない高度な文明都市の廃墟だ。

3.11以降の福島とは異なる印象を覚えるが、線量計を持たされた作業者や、誰も人が住まなくなった土地の描写から感じる印象は重なるものがあった。

しかし、放射能で汚染された世界だけを虚無的に描いている作品であれば、私は正直嫌になって読むのを途中で止めていたと思う。

この作品で何度も絶望の淵に立たされながらも、力強く生きていくメイクピースに惹かれ、彼女の行く末を確かめたかった。
そして、最後のシーンで、ほっとした気持ちになった。

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