ロケット・マンとは、宇宙開拓者のことで、二十一世紀に人類は穏和で健全な人間と、兇悪な気質を備えた人間を分けられ、前者は地球に残り、後者は宇宙開拓者として地球を離れ、宇宙での生活を送っていた。
しかし、穏和な人間だけが残る地球は恐ろしく沈滞化しきってしまい、人々は、突然現れた殺人狂になす術もなく、ロケット・マンのリュウに助けを求める。
リュウは、殺人狂を探索し始めるが、サチが友人から預かったという六歳の男の子ダニーに関心を示す。この男の子は、無気力で大人しい地球人とは違い、気性が荒く、暴力的な事に情熱を持っていた。
やがて、ダニーは、リュウが持ってきた熱線銃を隙を見て奪い、リュウとサチを襲う。
サチを殺されたリュウは、ダニーが人喰い虎であることを知るが、同時に自分とサチの子であることを人から知らされる。
ダニーが持っていた獣性は、とりもなおさず、リュウのそれが遺伝したものだった。
リュウは、ダニーに対して父親としての愛情を感じながらも、熱線銃を持つ残忍なダニーと対決することになる...という物語だ。
一読して、この物語は「人狼、暁に死す」のプロトタイプだなと思った。
リュウが犬神明、ダニーが犬神明の狼男の血を輸血され、超常能力を発揮し始める人狼の北野光夫、サチは光夫に翻弄される姉の北野雪子だ。
「人狼、暁に死す」では、狼男と人狼の死闘が描かれるが、本作では、リュウの中に生まれた戦いの喜悦だけが示される。
後年、人間の暴力性を多く描くことになる平井和正の萌芽のような意思をそこに感じ取ることができる。