福島原子力発電所1号機の格納器内の損傷がひどい。
今、廃炉に向けた工程の中で、最大の難関が、メルトダウンして溶け落ちた核燃料とコンクリートが入り混じった燃料デブリの取り出しだ。
実に3月11日の事故発生から12日間、1号機の危機は見逃されていた。
津波により電源を喪失し、格納器の燃料棒の冷却が懸念されていたが、電気がなくても格納器を冷やすことができるイソコンという装置があった。
しかし、実際に動かした経験がある東京電力の技術者がいなかったため、豚の鼻から、ちょろちょろと出ている蒸気を見て、イソコンが動いていると誤認してしまった。
(実際には、イソコンが動いているときは、大量の蒸気が放出される)
加えて、電源復旧後、再稼働したイソコンを、イソコンのタンクの水が無くなったと誤認し、3時間もの間、止めてしまう。これは、東京電力の技術者に、タンクの水が10リットル備蓄されているという知識がなかったためだ。
3時間後、タンクの水が10リットルあることが分かり、再稼働したが、その3時間に急速にメルトダウンが進み、もはや、イソコンでは対処できない事態になってしまった。
40年間、イソコンを実動作させる機会がなく、技術者の経験不足・知識不足から生じた失敗。
さらに1号機に注水された消防車からの給水ルートにも抜け道があり、 結果として、わずか注水した水の量の1%しか届かなかった(その事にも気づかず)。
番組では、東京電力の事故対応責任者たちの会話を、IBMのAIワトソンを使って分析していた。
水位が変わらない1号機について、当初、吉田所長は、水位計が壊れていることを疑っていたが、3号機の水位が下がってゆく危機的状況に、注意が逸れていく。
この状況を客観的に見ていた柏崎刈谷原発の責任者から、1号機の水位計について疑義が呈される発言があったが、吉田所長は、あくまで東京電力本店とのやりとりに集中していたため、この発言は置き去りにされた。
また、1号機の格納器内で急激に線量が高くなったことも見逃された。
加えて、2号機、3号機、4号機も加わった多重危機に、吉田所長一人に全ての事柄の決定が集中し、1日に会話がない時間がわずか5時間という過酷な状況が生まれる。
そして、事故発生から10日後、ついに吉田所長が疲労によるめまいのため、指揮官の席から離れる。
その日、ようやく、1号機の格納器の温度が400度になっており、1号機の冷却に失敗していることに気づく。
番組では、この経験を踏まえたとされる東京電力の事故を想定した訓練の様子(所長が現場ラインとは離れたブースに入っていた)や、識者による原子力発電所の機器の実動作の必要性を説明していた。
しかし、このシリーズを見るにつけ、核という怪物を人間が制御できるはずはない、という思いが強くなっている。
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170312
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