折口信夫の名前は、丸谷才一のエッセイで、「文体が気に入らないが、国文学者としては優れている」という印象を記憶していたが、この作品は読んでいて、相当つらいものがあった。
読んでも読んでも、文章が上滑りして頭に入ってこないのだ。
2回読んで、ようやくあらすじが分かったという程度だろうか。
ざっくり言えば、反逆者として非業の死を遂げた大津皇子の亡霊を、斎宮である藤原南家の郎女(中将姫)が、衣を織って、その霊を慰めるという話なのだと思う。
しかし、大津皇子のイメージ、白い肌と金色の髪(まるで白人ではないか)、そして、その上半身裸の姿が山間に浮かび、その姿に姫が見惚れるという情景に、異質な印象を感じてしまう。
「こう こう」とか、「おおう おおう」とか、「ほほき ほほきい」とか、「つた つた つた」とか、「あっし、あっし、あっし」とか、不気味な言葉も同様の印象を受ける。
現代の感覚では理解しがたい古代の世界を描いているから、と言われたら、そういうものかとも思ってしまうが。
でも、池澤夏樹が翻訳した古事記の世界観のほうが、はるかに理解しやすいというのが率直な印象である。
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