2013年5月19日日曜日

キャッチャー・イン・ザ・ライ/J.D.Salinger 村上春樹訳

村上春樹と柴田元幸の「翻訳夜話」を読んだ流れで、その続編「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」を読んでいたら、また、村上春樹が翻訳した「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読みたくなった。

2003年発売だから、この新訳(旧訳としては、野崎孝の「ライ麦畑でつかまえて」が有名)が出て、今年でもう10年経ったことになる。

この「サリンジャー戦記」は、村上春樹が、かなり力を入れて詳細にこの作品の魅力を解説(批評)しており、なかなか読み応えのある内容になっている。

10年前に読んだときは、この解説に、かなり強くひっぱられたせいか、「ライ麦畑」ってそういう物語だったのかという驚きのほうが強かったが、今回は、物語全体を楽しんで読むことができたと思う。

ホールデン少年が、次々と出くわす、ある意味、残念な出来事(学校、先生、友人、ガールフレンド、その他怪しい人々、自分に対する幻滅)のようなものは、こんなに多弁でユーモアに満ちたものではないにしても、十代から二十代を通り抜けた人なら、誰しも共感してしまう部分があると思う。

それは、日本で言えば、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」のような学校の推薦図書からは決して得られない類の共感だと思う。

ただ、ホールデン少年が抱く、死んだ弟のアニーや妹のフィービーに対する、単なる兄弟愛とは違うものを感じさせる想いなんかは、ちょっと独特な感じを受けました。

しかし、村上春樹の文体は、文句なしに、この作品の魅力を伝えるのに適していると思います。
「サリンジャー戦記」では、村上春樹が「フラニーとゾーイー」を関西弁で訳したいという抱負を述べていたが、是非読んでみたい。

以下、ゴシップ的な話です。

・未発表作品はあるのか?

  サリンジャーは、2010年1月27日に老衰で亡くなっているが、彼が最後に作品を発表したのは、1965年。晩年はアメリカ東部ニューハンプシャー州の田舎町コーニッシュで、一種の隠遁生活を送り、作品は一切発表しなかった。
しかし、以下の記事(信憑性は不明)によると、死後明らかになった彼の手紙から、その後も執筆活動を続けていたことが判明しているという。
 また、未発表作品の公表の条件が彼の遺言書に記されているのではないかと推測しているが、一体どうなんでしょう。
 もし、未発表作品があるのだとしたら、是非、読んでみたいですね。
http://www.theatlanticwire.com/entertainment/2013/01/jd-salinger-documentary/61553/

・サリンジャーとカフカ

 サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」と、カフカの「失踪者」はよく似ていると思う。
どちらもまだ人間として弱い十代の少年のアメリカを舞台にした放浪を描いたものだし、そもそも、二人には、自分が書いた小説に、自分の未来が暗示されているという点が共通している。
また、父親が実業家であることやユダヤ人としての共通点もある。
 ちなみに、サリンジャーは、好きな作家の一人として、カフカの名前を挙げていたらしい

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