2022年2月12日土曜日

日本人にとって聖地とは何か/内田樹・釈徹宗・茂木健一郎・高島幸次・植島啓司

内田樹は、「聖地」を「そこでは暮らせないところ」であり、「敬してこれを避ける」というのが基本であると説明しているのが興味深い。

そこに行くと、自分の感性がザワザワする、そのザワザワには、「よきもの」や「悪しきもの」に対する感知が含まれている。

巷で言う「聖地巡礼」とは異なる説明だが、ここでその「聖地」の例として挙げられているのが、熊野古道や新宮の火祭りなのだが、なんとなく、その意味しているところは伝わってくる。

また、大瀧詠一の言葉「聖地はスラム化する」を引いて、聖地のパワーが強ければ強いほど、周りには卑俗なものが配列されるという説明も面白かった。確かに有名な神社・仏閣・景勝地には、土産物屋とか、一昔前は遊郭などがあったことも説明がつく。聖と俗ですね。

本書は、あまり体系的な読み物ではないが、そのせいで、パラパラと他にも面白い説明があった。

茂木健一郎は、人間の性格の要素の重要な要素を5つ挙げており、第一がOpenness(新しい経験に対して開かれていること)、第二にExtraversion(外向的)、第三はAgreeableness(親しみやすさ)、第四はConscientiousness(物事を最後までやり遂げる力)、第五にNeuroticism(悩んだり嫉妬するネガティブな因子)から構成されているという。この第五をどうなだめたり、抑えるかが重要だと。
これに関して、内田樹は、暴力的なもの、攻撃的なものは、映画でも漫画でもあまり見ない方がいい(そこで見た血なまぐさい映像や心象に心は影響される)と言っているのも興味深かった。それと同じく、不安や怒り、恐れとか、切迫したら、瞬間的にパッと切る、というやり方は、心の調え方としてとても納得できる(実際にやるのは難しいと思いますが)。

植島啓司によると、三世紀の中国の書物に「海賦」があり、太平洋の航海記録が残されているという。イースター島を思わせる記述もあり、三世紀にすでに中国大陸から南アフリカ近くまでの移動の記録が残っているという。(インターネットで無料で読むことができると書いてあるが、ヒットせず。謎です)

魏志倭人伝にも出てくるが、縄文人は海洋民族で、体に蛇のうろこ等を入れ墨していた(司馬遼太郎の「木曜島の夜会」にもその末裔が出てきますね)。内田樹によると、その海洋民族の系列にあったのが平家で、源氏は騎馬民族系だった。源平合戦があり、日本の社会体制が変わり、古代から中世へ時代が転換した。武家が馬を操って日本中を制覇していく時代になった。

と、色々と面白いエピソードが書かれています。


*新宮の火祭りは、私も行ったことがないですが、youtubeで映像がありました。例年2月に行われるようですが、今年は神事のみ行われるとのことです。コロナの影響でしょうね。残念です。

1 件のコメント:

  1. 海賦に関する情報は、これですね。たぶん。
    https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/901414/12
    解説が書いてあるのが、以下のページ
    http://www.marino.ne.jp/~rendaico/rekishi/yamataikokuco/furutaronco/yamataikokuronco/ronri/11_5.html

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