今、読み返すと、全く記憶がない章があったし、これは高校生には理解できないだろうというテーマもあった。
ただ、この本を読んで、これはすごい本だという記憶は確かにあった。当時は、ろくな本を読んでいなかったと思うが、それでも、この容赦のないほどの論旨の明快さが心に突き刺さったのだと思う。
今こうして、この本を久々に再読すると、岸田秀が唱えている唯幻論のほとんどのテーマ(歴史、性、人間、自己)が網羅されており、この一冊を読めば、彼の主張は理解できる内容になっていることに驚いた。
処女作にして、すでに彼の唯幻論は、ほぼ完成していたことを証明している。出し惜しみもない。
個人的には、「自己嫌悪の効用」が特に強烈である。自己嫌悪の原理を分かりやすい言葉で説明するその一文に、醜い自分の姿が鏡に映し出されたような気分を覚える。
こういう恐ろしい読書体験はめったにない。
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