2018年4月30日月曜日

わたしを離さないで/カズオ・イシグロ

読んでいると、静かにだけれど、心が少しずつ揺さぶられるのを感じる。
この小説は、まっさらな状態で読むべき本だと思う。

あとがきも、文庫本の裏表紙に書いてある紹介文も読まず、いきなり、テキストを読む。
何の予備知識もなく、読み進めていくうちに気づいてしまったときの思いというか、痛みがこの本を体験するうえで一番重要なことなのだと思う。

そういう意味で、これは怖い物語だ。

私は、この物語の奇妙な背景と提供者の痛みをリアルに感じすぎてしまったのか、体調のせいもあると思うが、貧血を起こしてしまい、冷や汗をかきながら、電車を途中下車してしまった。

読み進めたくないけれど、物語の力で読み進めざるをえない。
そういうアンビバレンツな複雑な感情を生起させる。

こういう読書体験ははじめてだ。

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