物語シリーズは終わったはずだが、老倉育(おいくら そだち)と、神原駿河(かんばる するが)、阿良々木月火の後日談が語られている。
第一話の老倉育の話は、あまりにも暗すぎる。読んでいて気が滅入るし、何より、彼女が転校先の学校で関わるクラスメイトたちの顔や表情が全く思い浮かばない。
私が最もひっかかったのは、老倉育がクラスメイトの秘密を暴露するシーンなのだが、おそらく、この物語で最も盛り上がるべき場面であり、肝(キモ)にしたかったであろうスマートフォンの画面がまったく具体的に描かれていないせいで、老倉の必死さも、クラスメイトの陰湿さも、イメージがぼやけてしまっているところだ。
これだけ暗いテーマを選んだのなら、とことん、その暗さを描き切れば、まだしも、中途半端な書き方に終始しているせいで、評価は最悪である。
第二話の神原駿河の話は、花物語で無くなったはずの木乃伊の一部が、再び、彼女の目の前に現れるという物語で、忍野扇(この物語では男)とともに、その謎解きをするというあらすじだ。
ポーの黄金虫を意識して、暗号を解くお馴染みの推理小説仕立てであるが、神原駿河が、彼女なりの正義感を感じて、木乃伊取りを今後行っていくことに前向きになったところが、この物語らしい。
文中、羽川翼の新たなトラブルに阿良々木が関わっているというところが若干気になる。
第三話の阿良々木月火の話は、式神の斧乃木余接(おののきよつぎ)が、不死鳥の怪異である阿良々木月火の監視のため、阿良々木家に“人形”として潜入するのだが、アイスクリームを食べているところを月火に見つかってしまい、実は人形でないことに気づかれてしまう。
月火にサラダ油をかけられ、燃やされてしまうリスクを避けるため、余接は、魔物退治という話をでっち上げ、その魔物作りのために、千石撫子に蛞蝓のイラストを書いてもらうという変な展開になる。
しかし、撫子の書いた蛞蝓のパワーが思ったより強力なせいで、本当の魔物と化した蛞蝓に余接と月火はピンチに陥ってしまうという物語だ。
この第三話が、一番馬鹿馬鹿しくて面白かった。
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