2014年5月17日土曜日

NHKスペシャル「集団的自衛権を問う」

集団的自衛権の行使容認を進める安倍総理大臣が設置した有識者懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、昨日15日に、安倍総理大臣に対して報告書を提出。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/anzenhosyou2/

これを受け、安倍総理大臣が当日の夕方、記者会見を行い、イラスト入りのパネル2枚を使って、集団的自衛権の行使容認や海外での自衛隊の活動拡大の必要性を説明し、政府として集団的自衛権の行使を可能とする検討を進めていく意思を表明した。

今日の夜、放映していたNHKスペシャル「集団的自衛権を問う」では、賛成派として、安保法制懇の副座長の北岡伸一教授と、安倍総理の首相補佐官の2名、反対派として、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏、中野晃一教授が出演し、議論を交わしていた。

この集団的自衛権について比較的分かりやすい説明をしている北岡教授と柳澤氏の議論が聞きたかったので、興味深いものだった。

面白かったのは、安倍総理がイラスト入りのパネルを使って特に熱心に説明していた「周辺有事の際に在外邦人を輸送する米軍艦船の防護」について、柳澤氏が集団的自衛権の行使を用いなくても、法制度を変更すれば個別的自衛権の枠組みの中でも対応可能ではないかと考えを述べたのに対し、北岡教授もそれが可能であることをあっさりと認めたことだ。

「日本人自身が攻撃を受けていなければ、日本人が乗っているこの米国の船を日本の自衛隊は守ることができない。これが憲法の現在の解釈です。」と強調していた安倍総理大臣と安保法制懇の主要メンバーである北岡教授の考えに相違があることを、他の発言でも随所に感じた。

もう一つ挙げると、このパネルで安倍総理が「まさに紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子供たち…」と情緒的に国民に訴えていたことに対し、中野教授は、このパネルの後に、必ずハッピーエンドがある訳ではなく、むしろ、米艦船を防護した日本が、他国から反撃を受け、それに対してさらに応酬し、戦争に巻き込まれる蓋然性も高いこと、そして、日本人の命を守らなければならないと主張するならば、このようなリスクもきちんと説明すべきであると指摘していたことだ。

結局、集団的自衛権の本質が、自国が攻撃されていないのに、同盟国が他国から攻撃された場合などに、当該他国へ反撃できるようにするということなのだから、日本が他国と交戦状態に陥る可能性は、これまでより高まることは間違いないと言っていいだろう。

これは、やはり現在の枠組みである個別的自衛権(専守防衛)という方針とはまるで違うものだ。
歴代政権が、集団的自衛権の行使が憲法上認められないと判断していたのは妥当な見解だったのではないだろうか。

賛成派からは、集団的自衛権の行使ありきではなく、抑止力としてあくまでカードを多く持っておくことの意義を主張していたが、実際に行使できる状態になる以上、時の政府の判断により、そのカードを行使したとしても、われわれ国民としては文句は言えないことになるだろう。

安倍総理大臣の記者会見では、集団的自衛権のメリットばかり説明していたが、自衛隊が攻撃され死傷者も出る恐れもある。日本も第三国から攻撃される恐れもあるというデメリットもきちんと説明しておくのが理想的だったと思う。

ただ、国民にこのように安全保障を考えさせる契機を与えてくれたという意味では、安倍総理のおかげと言えなくもない。

これから日本が国際社会に果たしていく役割を踏まえ、集団的自衛権の行使容認が必要ということであれば、やはり、堂々と憲法改正の手続きをとり、国民の同意をとることが妥当な判断だと思う。

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