読者を二人称の“あなた”に仕立て、アメリカの色々な街を巡らせる手法は「容疑者の夜行列車」と同じだが、その雰囲気は、舞台をアメリカにしたせいで、より不安定感が増しているような雰囲気がある。
人工的な街で、見知らぬ人々が接触する。人々はフレンドリーだが本当には分かり合えない壁のようなものがあって、人と人の触れ合いが何処か希薄で、ふと気づくとぽっかり暗い孤独な穴が垣間見える、そんな社会。
私は読んでいて、カフカが書いた「失踪者」と似たアメリカの世界をこの本から感じた。
第一章 スラムポエットリー ニューヨーク
空港での入国手続きの描写が秀逸。詩人が出る何かの大会のから騒ぎ的な熱狂の様子は、「失踪者」で描かれたアメリカの選挙の雰囲気と似ている。
第二章 鳥瞰図 シカゴ
高層ビルの最上階で、旅行者とあなたが、見知らぬビジネスマンのオフィスで景色を鳥瞰するエピソード。ネクタイの図柄とエレベータのボタンの描写がいい。
第三章 免許証 ロサンジェルス
アメリカの車社会が垣間見える。バスから見る何気ないアメリカの危うい日常。
第四章 駐車場 ニューヨーク
「真昼の大型スーパーマケットの駐車場は、夜のガソリンスタンドの次に寂しい場所だ」という、まるで詩のような一節。この物語に出てくるクララのような女性は確かにいるような気がする。
第五章 フロントガラス ボストン
この作品は、少し犯罪をリアルに描きすぎているような気がする。タイトルの「非道」を感じたのはこの作品だけだ。
第九章 水の道 サンディエゴ
ここで描かれるシーワールド(水族館)は、カフカの「失踪者」の「オクラホマ劇団」と雰囲気がとても似ている。後ろから声をかけてくる男の描き方が秀逸だ。
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