私がこの小文を見つけたのは、内田樹が編者となってまとめた「ポストコロナ期を生きるきみたちへ」だが、このコロナ禍で読んだ文章で最も印象に残った一文だ。
メメント・モリ — 死を想え という言葉は、私も知っていた。
藤原新也の本で知った言葉だが、私は、中田考のこの文章を読むまですっかり忘れていた。
このコロナ禍で、「死」が近いものと感じられた時期だったのに。
それどころか、毎日のニュースで報道される感染者数、医療専門家の警告、政治家たちの発言、会社の通達、社会の自粛ムードそういったものに振り回され、茫然自失になっていたのではないだろうか、そう思ってしまうほど、この中田考の「メメント・モリ」は私に解毒剤を、自由を、与えてくれたように感じた。
(1)人は必ず死ぬ、(2)自分が本当にしなければいけないことは何もない、という真理。
この一見絶望的な言葉に、私は自分の気持ちがストンと腹の奥に落ち着いたのを感じた。
真の脅威は、COVID-19ではなく、人々の不安であり、人々の不安につけこみ、あなたがたを支配しようとするものだ、というこの小文の警告を胸に刻んで、来年は生きていきたい。
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