2018年1月21日日曜日

ゲド戦記Ⅰ 影との闘い/アーシュラ・K・ル=グヴィン

小中学生向けの作品ということもあるが、文章が非常に読みやすく(翻訳者の清水真砂子さんの文章力にもよると思う)、いい作品だなと思った。

ファンタジー作品なのに、文章に浮ついたところがない。

そして、圭角の多い主人公 ハイタカ/ゲドが魔法使いとしての修行をする中で自分に取りついた影と闘う物語は、あまりにも馴染みのあるストーリーと言っていい。

この作品から影響を受けたと思われる数多くの作品を自然に思い起こすことができるのが、その偉大さを証明している。

スター・ウォーズのフォースと暗黒面は、そのものだと言えるし、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」などにもその影響をみることができる。西尾維新のライトノベル小説「猫物語(白)」まで、カバーしてしまうと思う。

この作品は、「イシが伝えてくれたこと 鶴見俊輔」(近現代作家集 III/日本文学全集28)を読み終わった時から読みたかった本だが、ようやく、読み終わることができた。

一人の原住アメリカ人が示した欧米文明に対する批評の精神を受け継いだル=グヴィンが、このような豊かな作品を作り上げたことが、まるで奇跡のように思える。


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