彼が文章を書くために入り浸った様々なカフェやレストラン、様々な料理や酒の数々、そこに出入りする彼の一風変わった友人たち、他の小説家のインスパイアを受けるための貸本屋、セーヌ川、競馬場、競輪場。そして、貧しいながらも、人生を楽しむ妻との生活。
そこで生活する人々の匂いまで感じられるような文章になっているということは、ヘミングウェイにとって、パリでの生活の思い出は、もはや身体の一部になっていたのだろう。彼が冒頭の文章で述べているとおり。
もし、きみが、幸運にもしかし、何といっても、同世代の作家 スコット・フィッツジェラルドとの逸話が秀逸である。
青年時代にパリに住んだとすれば
きみが残りの人生をどこで過ごそうとも
パリはきみについてまわる
なぜなら、パリは
移動祝祭日だからだ
彼との奇妙な旅行の逸話、そして愛妻ゼルダとともに崩壊していく生活の生々しい描写は、一読の価値があると思う。
ヘミングウェイが、これほど近く、フィッツジェラルドに近づいていたとは知らなかったので、とても新鮮でした。
※この本は、私が聞いているNHKのラジオ英語番組「攻略! 英語リスニング」で取り上げられていて、偶然読んだ本でした。
※私が読んだのは、土曜文庫という聞きなれない書店の、シンプルな装丁の文庫本でした。(福田陸太郎 訳)
※ヘミングウェイたちを、ロスト・ジェネレーションと呼んだガートルード・スタイン女史との付き合いについても触れられています。
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