一度は追い返されるが、ロレーヌから来た少女がフランスを救うという古い伝説を背景に、次第に周りの人々が特別な少女であると騒ぎだす。やがて、シャルル7世とも親戚関係にあるロレーヌ公にも呼び出され、出し抜かれることを焦ったボードリクールが彼女に兵を貸し与えることになる。
髪を切ったジャンヌ・ダルクは、決して多くはない兵士たちと、敵陣を潜り抜け、シャルル7世がいるシノン城にたどり着く。
そして、王太子とその母であるヨランドが与える様々な試練、審問をくぐり抜け、信頼を勝ち得た彼女についに兵が貸し与えられ、イギリス軍に包囲され、救援を待つオルレアンに向かうこととなる。
山岸凉子は上記の物語の流れを丁寧に描いていて、特にシノン城への行軍中、男だらけの兵士の中でのジャンヌ・ダルクのトイレ問題(草むらや穴が一つの酷い環境)を描いていることに感心してしまった。(普通の作家であればスルーする)
また、彼女の足を戯れに触る兵士や、彼女を襲おうとする連れの兵士、さらに、ポワティエでの審問では肉体的に処女であることを調べられる屈辱的な検査も受けることになる。
これらの精神的なダメージと恐怖を、ジャンヌ・ダルクがいかに乗り越えていくかも、物語の見どころの一つになっている。
(しかし、彼女を襲おうとした兵士の改心の理由が笑える。こういう勘違い男は世の中に大勢います)
本当に神に選ばれた少女なのか、それとも、もともと聡明であった少女が、たまたま、何度もの幸運に恵まれただけなのか。しかし、その連続した幸運こそが神の恩寵ではないのかとも思える。
この物語は、その解釈に幅を持たせながら、ますます面白くなっている。
はやく続編が読みたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿