2016年11月13日日曜日

アメリカ大統領選挙に思う


あれだけ人種差別発言、女性差別発言を繰り返してきた男を、まさか、アメリカ国民が選択するはずはないと思っていただけに、トランプ氏が大統領選挙に勝利したことに大きな衝撃を受けた。

  とにかく、自分の生活水準を少しでも良くしてくれるのであれば、差別的言動など構わない
というのが、トランプ氏を支持したアメリカ国民の考え方だとすると気持ちが暗くなる。

自由と平等、民主主義、人権の尊重、どんな人種でも、どんな思想・宗教でも受け入れる多様性。

それが、アメリカが一貫して世界にもたらしてきた価値のはずであった。

その価値の源泉が根元から断ち切られたかのような今回の結果だ。


間違いなく、言えるのは、これからのアメリカの外交政策は、上記のような価値の推進・共有を前提としない、アメリカ第一主義という名の経済活動の場が中心になるということだ。

しかも、それは、Win-Winとは限らない、こすっからい契約交渉かもしれず、コンプライアンスもCSRも無視した事業活動かもしれない。

トランプ氏が、選挙後、いとも簡単に言動を軌道修正している様子を見ていると、確かにビジネスマンという気がする。
自分にとって利益になるものであれば、立場、主義、主張をいとも簡単に変えるのだ。

アメリカの利益になるのであれば、ロシアとも、中国とも手を結ぶだろう。
まるで、フィリピンのドゥテルテ大統領のように。

日本にとっても、これから様々な局面でタフな交渉を迫られることになると思うが、トランプ氏が大統領になることで、大きなチャンスが舞い込んできたとも言えなくはない。

それは、アメリカ抜きの日本というものを真剣に考える、いいチャンスが巡ってきたということだ。


対米追随の国策だけでは、もはや成り立たない時代が到来したと思った方がよい。

内田樹氏の「街場の戦争論」では、日本は主権国家ではなく、アメリカの従属国であると指摘しているが、従属国の政治目標は、「主権の回復」しかなく、そのためには「独立とはどのような状態なのか」を考えないといけない、と述べている。

そして、その手がかりは、敗戦以前の、日本がまだ主権国家だった時の日本人の心の中にしかない、彼らが何を感じ、どんな風に思考していたのかを遡及的に探ることが「主権回復」のためのさしあたりもっとも確実で、もっとも筋の通った処方ではないかとも。

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