この全集に載っている作品 詩、童話、小説を読んでいると、今まで持っていた宮沢賢治に対するイメージが変わってくる。
なかでも、印象的だったのが、「土神ときつね」、「泉ある家」、「十六日」にみる性を取り扱った作品だ。 「土神ときつね」にみる嫉妬に似たダークサイドな感情は、この人には無縁のものだと思っていたので、特に興味深い。
また、こどもの雪の遭難を描いた「水仙月の四日」と「ひかりの素足」も、並べて読むと、後者の童話的な世界からは遠い、自然は人間を生かしも殺しもするという現実的な描き方が際立つ。
「ポラーノの広場」も不思議な味わいがある作品である。一見、童話のようでもあるが、主人公のレオーノ・キューストが、なぜか、ファローゼたちと純粋な理想に満ちた生活を送らずに、決して幸福とはいえない都会の片隅のような場所から物語全体を振り返っているせいで、現代風な印象を残す。
巻末に、池澤夏樹の「疾中」と 「ポラーノの広場」のよく出来た解説があるので、興味がある方は是非一読してみてください。
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