2014年11月23日日曜日

キャンディを撮った日/片岡義男

僕の感じ方によれば、キャンディはけっしておいしいものではない。
基本的にはどれもみなひどく甘く、香りが少しずつ違っているだけだ。
味覚として好きなキャンディはほとんどない
こんな感想をキャンディに対して持った作家が書いたキャンディの本。
きれいな写真に写るキャンディはおもちゃのように現実感がない。

それらは、きれいだけれども、装飾品のように時に毒々しい色をし、時に気持ち悪い。
少なくとも口に入れるものではないのではないか、そんな思いがよぎる。
僕にとって、キャンディとは観察の対象であり、指先でさまざまに触れてみるものだった。…キャンディは見て楽しむ道具だ。キャンディで僕はどれほど遊んだろう。どれだけのキャンディの包装をはがし、そのままにしたことか。…僕にとって観察の対象たり得るとは、たいていのキャンディはそれぞれに奇妙である、ということだ。 
片岡義男という作家の本は、上記の文章におけるキャンディという言葉を、アメリカという言葉に置き換えてみると、すべて理解できてしまうのではないか。

この無機質な、まるでキャンディの匂いがするような本を、片岡の著作のかたまりに投げて、ふと、そう思う。


0 件のコメント:

コメントを投稿