西尾維新の物語シリーズは、主人公の阿良々木暦が出会った怪異を持つ少女たちを彼の視点で物語る作品が多いのだが、この猫物語(白)では、怪異を持つ羽川翼自身が語る設定になっている。
羽川翼は、物語の冒頭で、そんな設定を、コナン・ドイルの推理小説 シャーロックホームズの作品の中で、助手のワトソン博士ではなく、ホームズ自身が物語った作品「白面の兵士」になぞらえている。
この「白面の兵士」、どんな物語だったか、すぐに思い出せなかったが、原文で表記されていた
The ideas of my friend Watson, though limited, are exceedingly pertinacious.
の一節は覚えがあった。
確か、村上春樹の「羊をめぐる冒険」でも、この一節が取り上げられていたような気がする。
わが友、ワトソンの思考には、限定的ではあるが、ひどく執拗なところがある。 ぐらいの意味か。
考えてみれば、シャーロック・ホームズを熱心に読んでいたのは、小中学生の時代である。
どんな作品なのか、気になって調べていたら、なんと、今は、インターネットで読めてしまうのですね。(しかも味のある挿絵入り)
http://www.221b.jp/h/blan.html
五分ほどで一読。
筋立てがシンプルで登場人物がまともな人達で、不快な要素がない。すごく読みやすい。
いかにも古典的推理小説なだと思ったが、タネの部分からして、これは子供のころは記憶に残らないだろうと思った。
しかし、 ワトソンの語り口を批判したせいで、 " Try it yourself, Holmes ! " と言われ、自ら語らざるを得なかった名探偵という状況は、改めて考えてみると確かに面白い。
羽川翼は、そんなホームズに「のきなみ」がっかりしてしまったようだが、一方で、ホームズとワトソンの関係を、自分と阿良々木暦の関係のようにも感じ、自分探しの結末が阿良々木暦をがっかりさせないかを気に病んでいる。
こんなシャーロック・ホームズの珍品に目をつけて、登場人物に物語の前提を語らせてしまうとは、なんともユニーク。
ちなみに、ワトソンが登場せずに、ホームズ自身が物語るもう一編の「ライオンのたてがみ」も、上記のサイトで読むことができます。
(タネの部分も意外でしたが、人間関係の描き方に感心しました)
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