2012年3月20日火曜日

屋根の破壊と空中の飛行

ミルチャ・エリアーデの「聖と俗」によると、古代宗教では、人間が死ぬと、その魂が上方の開口部を通って抜け出し、他の世界へ移行するものと信じられていた。

魂の脱出を容易にするため、死んだヨーガ行者の頭蓋を砕く習慣が、インドにはあるという。

また、ヨーロッパやアジアにおいても、死者の魂は煙突(煙を出す孔)あるいは屋根を通って上昇するという考えがあり、臨終が長引く際には、数本の屋根の梁を取り払ったり、取り壊すこともあるという。

屋根の破壊と空中の飛行という形象は、それは制約された存在から無制約の存在へ、つまり完全な自由への移行を表わす。

ふと、コンクリート鉄筋造りのマンションの場合、魂はどこを通って抜け出すのだろうと考える。

キッチンの換気扇は油だらけになりそうだし、トイレやお風呂の換気扇も、匂いや湿りがありそうで、いただけない。

耳を澄ますと、そうやって、屋根を通り抜けることが出来ない魂たちの声が換気扇の低いモーター音とともに、かすかに聞こえてきそうな。

お彼岸の今日、花粉を気にしながらも、窓をいっぱいに開けて、数時間を過ごしました。

2012年3月19日月曜日

Google プライバシー ポリシー

映画ターミネーターで、人類を敵とみなして攻撃を開始する高度な知能を持つコンピュータシステム「スカイネット」。

ターミネーター 3では、「スカイネット」が、クラウド・コンピューティング上で動くシステムであったことが判明するが、もし、現代に「スカイネット」が実在したとして、人類の救世主であるジョン・コナーを効率的に抹殺しようと考えたら、間違いなく、Googleが蓄積した個人情報にアクセスするような気がする。

Googleが、2012年3月1日付で同社の「プライバシー ポリシー」を改定したことが、物議を醸している。

http://www.google.com/policies/privacy/

端末情報、
ログ情報(検索キーワードなど)、
電話のログ情報(自分の電話番号、通話の相手方の電話番号、転送先の電話番号、通話の日時、通話時間)、
インターネット プロトコル アドレス、
現在地情報、
固有のアプリケーション番号とインストール情報、
ローカル ストレージ、Cookie と匿名 ID

新ポリシーでは、上記により収集された情報、さらにはクレジットカード番号などの個人情報も、外部委託の場合や、法律上の要請(例えば犯罪捜査)の場合には、関連会社のみならず、Googleの判断によって、第三者に提供可能な内容になっている。

例えば、アンドロイドOSのスマートフォンを使っていたら、誰にいつ電話していたかも、Googleに情報が提供されることになる

Googleは一体、何をしたいのか?

例えばYoutubeなどのサービスにアクセスすると、検索するまでもなく、個々のユーザ好みのコンテンツが予め表示されている。そんなおせっかいな便利さを、追求したいだけなのか?

ひょっとすると、数年後に、自分という人間を一番正確に把握しているのは、身近にいる家族よりも、自分自身よりも、Googleなのかもしれません。

そんな笑えないSFチックな世界が近くまで来ている。

2012年3月17日土曜日

逆さまゲーム/アントニオ・タブッキ

SEVER 逆さまにすると REVES.

フランス語では「夢」の意味、スペイン語だったら「逆さま」…

フランス語とスペイン語の意味は、きっと、どこかの一点で合致するのではないだろうか。
その一点は、遠近法にしたがって画面に引かれた複数の線が交差する、あの消失点(ヴァニシング・ポイント)のようなものではないかと…

タブッキの短編小説「逆さまゲーム」を読んでいると、本当にそんな気分になる。

付き合っていた年上の女性の死をきっかけに、男は彼女の遺骸に会うため、ポルトガルに向かう。

彼女の思い出とともに登場する「逆さま」のキーワード、

遠近法で描かれたヴェラスケスの「侍女たち」、

現実も空想もすべてのものの裏側がわかっていた詩人フェルナンド・ペソア、

こうだと思っていたことが「逆さま」だと分かったとき、人は、人生がただのゲームに過ぎないのではないかという思いにかられるのだろうか。


たとえば 「逆さま」 の視点から発せられた愛の言葉は、まるで幻想的なゲームを楽しんでいるかのような印象を与える。
彼女はぼくの手をとって、言った。 
ねえ、わたしたち、いったいだれなのかしら。どこにいるのかしら。 
一生をまるで夢のように生きて。 
たとえば、今夜、あなたはわたしになったつもりで、あなたの腕のなかにあなたをしっかり抱きしめるって考えて。 
わたしも、あなたになったつもりになって、わたしの腕のなかに、しっかり、わたしを抱いているって考えるわ。

「逆さまゲーム」には、どこか人生の空しさの雰囲気もただようが、それだけではないと感じさせるのは、タブッキが、サウダージという複雑な要素が交じり合った思いを、物語のなかできちんと描いているからなのだろう。