精神疾患がある人たちが、コロナ禍の状況の中、非常に劣悪な環境で医療を受けている現状を知り、衝撃を受けた。
番組では、日本最大の精神科病院・都立松沢病院で、都内でクラスターが発生したX病院とY病院の患者を受け入れている事例を取り上げていた。
X病院では、コロナ陽性の患者を隔離することなく、大部屋で感染拡大を放置していた。理由は、病院自体が古く設備がなく隔離しようにも空いている部屋がなく満床状態だったため。コロナ陽性の区別なく、感染していない患者も含めて患者のいる病棟をレッドゾーン(汚染区域)として閉じ込めてゾーニングする。
これは保険所の指導だったらしい。その結果、当たり前だがどんどん陽性者が増え、クラスターがX病院のすべての病棟で発生した。さらに病院職員の1/3が陽性となり、事態は悪化する。
この番組で初めて知ったが、精神科病院は一般病棟に比べ医師の数は1/3、看護師数も2/3でよいという元々が脆弱な医療体制の配置基準が定められているという。
日本で精神科病院が作られたのは1950年代で、精神疾患がある人を隔離収容する政策を推進していた。その際、精神科特例として上記の配置基準を定め、安上がりな医療体制を作った経緯があったという。
その結果、精神科病院はどんどん増え、世界の精神科病棟の2割が日本にあるという現状に至り(ただし世界的には退院を促進しているのに日本は長期隔離収容と逆行している)、精神科病院の入院患者数は27万人もいる。この人たちは、このコロナ禍、通常医療より脆弱な医療環境の中にいる。
日本精神科病院の会長が語っていたが、退院を促進できない理由として、精神疾患がある人への根強い偏見があり、社会が受け入れないという現状を指摘していた。また、自分たちは安い医療報酬で、単に医療を提供しているだけでなく、社会秩序を担保する役割を負っているとも。
都立松沢病院の院長も、
「患者さんを退院させるときに一番の抵抗勢力は社会だからね。...自分の問題とは考えたくないんだよね。みんな考えたくない。精神科病院の塀はなぜできるかっていうと、「あの向こう側は知りませんよ」と。きれいな緑があって「あの奥に患者さんを入れておいてください」と...見たくないんだよ。自分が怖いものを」と痛烈な言葉を投げかけている。
Y病院では、さらに信じられない対応がなされていた。病院スタッフが大部屋に陽性患者を集め、患者に了解もなく、病室に南京錠を取り付けて隔離していたという(Y病院はクラスターが発生したこと自体、公にしておらず、患者とヘルプに入った松沢病院のスタッフの証言)。鍵はごはんの時と投薬の時のみ開錠され、多くの患者を詰め込んだ部屋の真ん中にポータブルトイレを設置し、カーテンや仕切りもなく、そこで全員に用を済ませるという非人間的な状況を作り出していた。
恐ろしいのは、保健所が立ち入り監査もして南京錠隔離の事実を把握してながら何も是正していなかったということだ(保健所およびY病院はノーコメント。東京都も後日、病院の運営に支障をきたすという理由で回答を拒否)。
都立松沢病院の院長が最後に語っていた
「世の中に何かが起きたときに、ひずみは必ずぜい弱な人の所にいく。社会には弱い人がいて、僕らの社会はそれに対するセーフティーネットをどんどん細らせていることをもう一度思い出すべきなんだと僕は思う」
という言葉が重かった。
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009051339_00000